大百足
朝、僕が目を覚ますと目の前に昨夜保護した幼女(妖怪)がいた。
「おはよう」
彼女はそう言うと僕の額に優しくキスをした。えーっと、今のはあいさつ、だよな?
僕がゆっくり上体を起こすと、彼女は僕をギュッと抱きしめた。
「助けてくれてありがとう」
「どういたしまして。それより早くお風呂に入った方がいいぞ」
「どうして?」
「えっとな、昨日、座敷童子の童子がお前の体を拭いてくれたんだけど、体の隅々まで拭いたわけじゃないんだよ。だから、早くお風呂に」
「じゃあ、一緒に入ろう」
「え? いや、それはさすがに」
「ダメなの?」
「ダメというか、僕がオオカミになる可能性があるから」
「オオカミ? お兄さんは狼男なの?」
「違うよ。でも、男はみんなオオカミなんだよ」
「そうなの? じゃあ、お兄さんがオオカミになりそうになったら言って。私が八つ裂きにしてあげるから」
「八つ裂きって。はぁ……まったく、そんな言葉どこで覚えたんだ?」
「知らない。それよりほら、早く一緒にお風呂入ろう」
「はぁ……はいはい」
「お兄さん」
「なんだ?」
「私、大百足に狙われてるからしばらくこの家に居させて」
「……え?」




