好きです。一生私のそばにいてください
座敷童子の童子は僕から逃げるように夜道を歩いている。
「なあ、童子」
「何ですか?」
「えーっと、その……なんで怒ってるんだ?」
「怒ってません」
「いや、怒ってるじゃないか。なんだ? 何か嫌なことでもあったのか?」
彼女は急に立ち止まると僕の目を見ながら、こう叫んだ。
「ええ、ありましたとも! 私の最愛の人が別の女にキスされているところを見てしまったのですから!!」
あー、原因はそれか。まあ、キスされた箇所は頬だけどな。
「いや、あれは挨拶だろ?」
「挨拶なんかじゃありません! あれは好きな人にしかしないキスです!!」
「そうかなー?」
「そうです!!」
「そうか。じゃあ、するか?」
「え?」
「その……お前は僕と……キス、したいんだろ?」
「は、はい、そうです」
「じゃあ、公園行こうか」
「はい」
彼女はそう言うとトテトテと僕のとなりまでやってきた。その後、彼女は何も言わずに僕の手を握った。童子の耳は真っ赤になってるな。緊張してるのかな?
こ、これはチャンスです! キスのその先までやってしまいましょう!! 夏樹(僕の実の妹)さん、ごめんなさい。でも、私もう我慢できません!!
「……ほ、星がきれいだな」
「そ、そうですね」
き、気まずい……。とりあえず公園のベンチに座ってみたけど、会話すぐ終わっちゃうな……。
「こ、公園のベンチってなんか落ち着くよなー」
「雅人さん」
「なんだ?」
「好きです。一生私のそばにいてください」
「え?」
彼女は僕の膝の上に乗ると僕の背中に腕を回した。あー、そうか。僕は彼女にプロポーズされたのか。というか、いきなりすぎて頭が混乱してるな。え、えーっと、これからどうすればいいんだ?
「あー、えーっと、ちょっと考えさせてくれ。今、頭が混乱してるから」
「ダメです。今すぐ返事をしてください」
「いや、だから今はちょっと」
「雅人さん」
「ん? なんだ?」
「お願いします! 私のものになってください!!」
彼女が僕の唇を奪おうとした時、黒い長髪が童子をジャングルジムまでふっ飛ばした。




