気をつけてくださいね
僕と一緒に寝ている夏樹(僕の実の妹)とやーちゃん(夜刀神)は幸せそうな表情を浮かべている。さすがに三人一緒に同じベッドで寝ると狭いな。よし、そろそろ僕も寝るか。
僕が目を閉じようとすると悪霊の気配を感じた。目標はこの家ではないな。えーっと、たしかこの方角にはあいつの家があるな。
「童子、起きてるか?」
「はい、起きています」
「そうか。じゃあ、行こうか」
「はい」
久しぶりに来たな。よし、じゃあ、行くか。
「夜分遅くに失礼します。葵さんの様子を見に来ました」
「娘は先ほど床につきました」
「そうですか……。でも、それ、僕がここに到着する前の話ですよね?」
「……っ!!」
葵さんのお母さんの霊力が少しだけ乱れている。嘘ではないが真実を言っていない証拠だ。
「それにしても今夜は冷えますねー。いや、今夜というよりこの家の中だけですね。いやあ、それにしても寒い。どうしてこんなに寒いんですかねー。冷房でもつけてるんですかねー」
雪女の家にないと困るのはエアコンだ。なぜなら熱帯魚のように温度調節をきっちりしないと今のこの家のように冷気が充満してしまうからだ。
「どうやら、全てお見通しのようですね。娘の部屋まで案内します。私についてきてください」
この雪女、僕を試したな。まあ、別にいいけど。
「はい」
葵さんの部屋に近づくにつれてだんだん気温が下がっていく。うーん、でも、あいつなら悪霊に取り憑かれてもすぐ対処できそうだよなー。
「ここです」
「お母さん、僕がいいと言うまで葵さんの部屋に決して入らないでください」
「分かりました」
「童子、お前の命の温もりを感じさせてくれ」
「はい、分かりました」
僕が彼女をギュッと抱きしめると彼女は僕に命の温もりを分け与えてくれた。よし、これならなんとかなりそうだな。
「ありがとう、もういいよ。じゃあ、行ってくる」
「気をつけてくださいね」
「ああ」




