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うーん、やーちゃんかな?

 僕が風呂場で頭を洗っていると誰かが僕の背中に抱きついた。


「ん? 誰だ?」


「当ててみて」


 声は夏樹なつき(僕の実の妹)だけど、僕の体に触れている手は夏樹のものじゃないな。


「うーん、やーちゃんかな?」


「正解だ。よく分かったな」


「まあ、一応あいつのお兄ちゃんだからな」


「ほう、実の兄というものは実の妹の肌の感触まで把握していないといけないのか。大変だな」


「いや、別にそこまでする必要はないぞ」


「そうなのか?」


「みんながみんなそんな感じだったら世の中もっとおかしくなってるよ」


「ふむ、まあ、その可能性はあるな。ところでお前は将来結婚するのか?」


「うーん、どうだろう。まだよく分からないな」


「そうか。まあ、するなら早めにした方がいいぞ。あと三十五歳以上のやつとは結婚しない方がいいぞ」


「まあ、子どもが欲しい場合はそうなるかな」


「それもあるが、たまーに遺産目当てで結婚するものがいるから相手のことをある程度知ってから結婚した方がいいぞ」


「詳しいな。そういう経験あるのか?」


「経験はない。だが、地下室に封印されていた時、私はたまに見ていたんだよ。主に人という生き物を」


「へえ、人間観察が趣味なのか。それで? やーちゃんは人間のことどう思ってるんだ?」


「どうでもいい」


「え?」


「生きたいくせに死にたいと言う者や戦いたくないのに戦わないと生きていけない日常に縛られている者、自分を殺してまで過労した結果早めに人生終了する者なんかを見ているとな、どうでもよくなってくるんだよ。生きたいなら生きたいと言えばいい、戦いたくないなら戦わなくてもいい場所に行けばいい、過労で寿命を縮めたくないのなら転職すればいい。少し考えれば解決するような問題から目を逸らして現状維持という愚かな選択をする生き物なんてどうでもいい。早く全員くたばってしまえ」


「えっと、僕も一応、半分人間なんだけど」


「お前はほぼ妖怪側だ。だから、お前は高校を卒業しても今の姿のままだ」


「そうか。もう僕は人じゃないのか」


「安心しろ。お前の心は永久に人間のままだ」


「なぜそう言い切れるんだ?」


「お前の心がそう言っているからだ」


「えー、なんだよ、それー」


 なぜだろう。ただ会話しただけなのになんとなく心の距離が少し縮まったような気がする。気のせい、かな?

 ああ、楽しい。お前と話しているだけで私の心はお前の元へと近づいていく。こんな体になってしまったのはお前のせいだ。ちゃんと責任取ってくれないと泣くぞ。

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