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やーちゃんの髪

 やーちゃん(夜刀神やとのかみ)の様子がおかしい。うちに帰ってみんなに自己紹介した時は普通だったから、多分そのあとからおかしくなったんだろう。


「やーちゃん」


 やーちゃんは僕の部屋のベッドに横になっている。彼女は片腕で両目を隠している。


「なんだ、雅人まさとか。どうした?」


「なあ、やーちゃん。もしかしてどこか悪いのか?」


「気にするな。腹が減っているだけだ」


「そうなのか。じゃあ、何か作ろうか?」


「必要ない。今の私に必要なのは……霊力だ」


「そうか。霊力か。それで? どれくらい必要なんだ?」


「ちょうどお前一人分だ」


「え?」


「死にたくなければ早くここから出ていけ。じゃないと私は」


「それでやーちゃんが満足できるのなら僕は喜んでやーちゃんの一部になるよ」


「ほう、そうか。ならば、今すぐ食らってやろう!!」


 彼女の体から出た黒いオーラが僕をベッドまで投げ飛ばす。彼女はあかい瞳を輝かせながら僕に覆いかぶさる。彼女は狂気と食欲が混ざったかのような笑みを浮かべている。そのせいで彼女の口は今にもけそうになっている。僕の四肢ししを黒いオーラで拘束し、今にも襲いかかりそうな彼女は僕の目をじっと見つめている。


「怖くないのか?」


「どうして怖がる必要があるんだ? やーちゃんは僕を食べる気なんてこれっぽっちもないじゃないか」


「ふむ、バレていたか。しかし、腹が減っているというのは本当だ。なあ、雅人まさと。お前の霊力を少し私に分けてくれないか?」


「霊力だけだぞ。血を吸っちゃダメだぞ」


「分かった。では、さっそくいただくとしよう」


 彼女は僕の首筋を甘噛みした。痛みはない。どうやら僕の霊力だけを吸っているようだ。器用だなー。


「ありがとう、雅人まさと。お礼にお前の願いを一つ叶えてやろう」


「願い? うーん、じゃあ、世界平和」


「それは無理だ。まあ、一部なら可能だがな」


「そうか。うーん、じゃあ、やーちゃんの髪を一本くれ」


「そんなものでいいのか? 私とキスがしたいとか私と交わりたいとかでもいいんだぞ?」


「そういうのはお互いのことをもっと知ってからでいいよ。体の距離を無理やり縮めても心の距離は縮まらないから」


「経験ないくせによくそんなこと言えるな」


「経験してなくても分かるよ。心の距離が縮まらないといくら体の距離を縮めても近くにいるような気がしなくてむなしくなるから」


「そうか。ほら、私の髪だ。大事にしろよ」


「ああ、家宝にするよ」


「それはやめておけ。お前の宝物にしろ」


「? 分かった、そうするよ」


 そうしないとお前の子孫たちが不幸になってしまうからな。

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