これが一触即発というやつか……。
あっ、まずい! 夏樹(僕の実の妹)、そろそろキレそう!!
「おい、いきなり呼び出しておいてなんだ? その態度は」
「いやあ、悪いとは思ってるけど、今回は相手が悪すぎるからねー」
「だからって私のお兄ちゃんに丸投げするなよ」
「丸投げ? 一応、サポートはするよ。まあ、地獄の力をほんの少しだけ貸すだけだけどね」
「おい、そいつはそれっぽっちで倒せる相手なのか? あぁん?」
「君、今すぐ死にたいの?」
「夏樹。見た目は幼女だけど相手は閻魔大王だぞ? もう少し言葉を選んでくれ」
「気にしないで。亡者たちはだいたいこんな感じだから」
「え? あー、はい」
「とりあえずよー、地獄の力をうちのお兄ちゃんに全部貸してくんねえかなー?」
「それをすると君のお兄さん確実に死ぬよ?」
「死なねえよ、その力を入れる器は鬼姫なんだからよ」
「あー、なるほど。それなら一応可能だね。でも、地獄の力っていうのは現世に持ち出すだけで環境を変化させてしまうほどのものなんだよ。だから、さすがに全部貸すことはできないよ。あー、あと使用する回数によって寿命が十年縮んじゃうよ」
「ふざけるな! そんな力、今すぐなくなってしまえ!」
「話を最後まで聞け。小娘」
「嫌だね」
「いいから聞け」
「やなこった」
「聞け!!」
「……うっさいなー、しゃべりたきゃ勝手にしゃべればいいじゃねえか」
「そうか。では、そうさせてもらおう。夏樹、お前の兄と合体しろ。そうしなければ、やつには勝てない」
「そんなに強いのか? やつは」
「強い。十王の力を全て結集しても封印することしかできなかったからな」
「そうか。たしかに強いな」
「ああ、しかもやつは殺すことと奪うことしか考えていない」
「常にバーサーカーかよ」
「まあ、そんなところだな。それで? やるのか? やらないのか?」
「私はどっちでもいい。いや、どうでもいい。私はお兄ちゃんの考えに賛同するだけだ」
ええ……。
「だってさー。雅人ー、どうするー?」
閻魔大王はニコニコ笑っている。
「き、君は何かしてくれるのか?」
「地獄の力をほんの少し貸すくらいしかできないよー」
「それ以外は?」
「うーん、そうだなー。私の所有物になれば、私の力全部使えるよー」
「おい、てめえ。今なんて言った?」
「夏樹ちゃん、顔怖いよ」
「質問に答えろ」
「私の所有物になれば私の力を全部使える」
「そう、それだ。なあ? てめえは私のお兄ちゃんを所有物にするつもりなのか?」
「うん、そうだよ。悪い?」
「ああ、悪い。悪すぎる。もう頭にきた……てめえだけは絶対に許さねえ」
「おっ、やるの? この私と……」
両者が睨み合うと両者の体からオーラが出始めた。これが一触即発というやつか……。




