じゃあ、どうしてさっき抵抗しなかったの?
僕が自室に行くと夏樹(僕の実の妹)が待ち構えていた。彼女は僕をベッドに押し倒すと無理やり僕の唇を奪った。キス。それは僕が座敷童子の童子に支払った情報料だ。そして夏樹はそのことを知っている。というか、物陰から見ていた。だから、今こうして……。
「な、夏樹! なんか今日激しいぞ!」
「ねえ、お兄ちゃん」
「な、なんだ?」
「私のこと好き?」
「え? ああ、好きだぞ」
「嘘。本当は童子ちゃんのことが好きなんでしょ?」
「いや、別にそんなことは」
「じゃあ、どうしてさっき抵抗しなかったの?」
「そ、それは……不意打ちだったから」
「へえ、そうなんだ。じゃあ、不意打ちじゃなかったら抵抗してたんだね?」
「うん、まあ、多分」
「多分? なんで絶対抵抗するじゃないの?」
「それは……分からないからだよ」
「分からない? 何が?」
「僕はさ、なんか感覚が麻痺してるんだよ。誰かに体を乗っ取られたり、主導権を握られても特にダメージないところとか事件が起きてもおかしいくらい冷静なところとか。とにかく僕はだんだんおかしくなってきている。だから」
「童子ちゃんに迫られたら受け入れちゃうかもしれない……。そう言いたいの?」
「ああ」
「そっか。分かった。じゃあ、私がお兄ちゃんを修理してあげるよ。そうだなー、まず私の髪で頭のてっぺんからつま先まで全部貫いてあげる。次にお兄ちゃんの内臓全部にキスしてあげる。最後にお兄ちゃんの体液全部、私の喉できれいにしてあげる。まあ、要するにうがいだね。あっ、先に手で洗った方がいいかな?」
「夏樹、僕は多分生まれた時から壊れているんだ。だから、そこまでする必要はないよ。でも、お前と一緒にいられなくなるのは嫌だな」
「そっか。じゃあ、今すぐお風呂入ろう。そうすれば、きっと少しはマシになると思うから」
「そうか。分かった。じゃあ、行くか」
「うん!!」




