ほっといたら三日くらいで死ぬわよ
僕たちが学校に着くと、一人の女子生徒がこっちに向かって歩いてきた。あの子、具合悪いのかな? 下を向いて歩いているため表情は分からないが、彼女は左胸を押さえながらゆっくりとこっちに向かって歩いている。なんか苦しそうだな。誰か肩貸してあげればいいのに。僕がそんなことを考えていると僕の目の前で停止した彼女が口を開いた。
「助けて……ください……」
彼女はそう言いながら僕の胸に体を預けた。
「私のお兄ちゃんに許可なく触るな!!」
「落ち着け、夏樹。それより早くこの子を保健室まで運ぼう。すごく辛そうにしてるから」
「うん、そうだね! そうした方がいいね!!」
「よし、じゃあ、行くか」
「うん!!」
保健室……。
「よし、とりあえずベッドに寝かせてっと。夏樹、冷却シート持ってきてくれ」
「はーい!」
「あ、あの……」
「ん? なんだ?」
「私の胸、見てください……」
「えーっと、熱で頭がおかしくなってるのかな?」
「違います。私の左胸に変なものがあるんです。私の友達にそのことを言ったら、百鬼部の人なら治せるかもしれないって言ってて」
百鬼雪天神部の略か。まあ、その方が言いやすいよな。
「なるほど。そういうことか。夏樹、この子のおでこに冷却シート貼ってくれ」
「はーい!」
「あー、あと、この子の服を少し脱がし」
「え?」
「勘違いするな。左胸に変なものができてるってこの子が言ってたからそれを見るだけだ」
「分かった」
夏樹(僕の実の妹)は彼女の服を少し脱がすと彼女の左胸を見た。
「ねえ、お兄ちゃん」
「なんだ?」
「これ、なんて言うんだっけ?」
「どれだ?」
「ほら、これだよ」
「んー? あー、これか。これはほら、アレだよ。人面瘡」
「そう、それ! えっと、たしか潰さない方がいいんだっけ?」
「まあな。一応、コレクターに見せれば結構高値で買い取ってくれるけど、今回はダメだな。この子の体の栄養を吸い取って衰弱死させようとしてるから」
「わ、私、死ぬんですか?」
「君は死なないよ。僕がなんとかするから」
「そ、そうですか。なら、良かった……」
うーん、とりあえず焼いておくか。
「鬼姫、いるか?」
「なあに?」
「この子の人面瘡、お前の鬼火でなんとかできないか?」
「できるわよ。でも、これ自然発生したものじゃないわよ」
「ん? それって誰かがこの子に人面瘡の種を植え付けたってことか?」
「ええ、そうよ。しかも普通の人面瘡より成長スピードと宿主へのダメージが半端ないからほっといたら三日くらいで死ぬわよ」
「だから、こんなに苦しそうなのか。鬼姫、九割焼いてくれ。残りの一割はうちに持って帰って童子に見せるから」
「りょーかい。燃えろー、燃えてしまえー」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
断末魔うるさいな。まあ、いいや。
「夏樹、お前がいつも持ち歩いてるチャック付きのポリ袋出してくれ」
「えー、どうしようかなー」
「頼む。あとでたくさん甘えていいから」
「本当!」
「ああ、本当だ」
「なら、あげるー!」
「ありがとう。ところでいつもこれに何を入れてるんだ?」
「えー、何って、そんなのお兄ちゃんの体の一部に決まってるじゃん」
「そうか。分かった」
まあ、予想通りだな。えーっと、これでよしっと……。
「終わったぞー。他に何かしてほしいことあるか?」
「ない。助けてくれて、ありがとう」
「どういたしまして」




