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背後に注意

 昼休みはあと十分ほどで終わる。

 やれやれ、もう午後の授業か。

 時間の流れは早いものだな。

 僕がそんなことを考えながら、教室に戻ろうとすると何者かの視線を感じたような気がした。

 反射的に振り返るが、誰もいない。

 気のせいかな?

 その時の僕は特に気にすることなく、教室の中に入った。


「おい、羅々(らら)。もう放課後だぞ」


「ふぇ?」


 僕が幼馴染の『百々目鬼(とどめき) 羅々(らら)』の体を揺すると、彼女は寝ぼけまなここすりながら、目を覚ました。


「あー、雅人まさとー。おはよう」


「おはよう、じゃない。部員集めはどうした?」


 彼女は背伸びをしながら、こう答える。


「あー、あと一人だったねー。まあ、なんとかなるでしょ」


 のんきでいいな、お前は。

 というか、僕がいなかったら絶対見つけられなかっただろ。

 うーん、まあ、いいか。


「そうだな。じゃあ、僕は失礼するよ」


「また、あのひきこもりのために帰るの?」


 こいつ、また妹のことを侮辱ぶじょくしたな。


「ひきこもりって言うな。夏樹なつきはお前が思っているほど、バカじゃないぞ?」


「分かってるよ、そんなことは。けど、いつまでも家に閉じこもってたら、雅人まさとにしか心を開かなくなっちゃうかもしれないよ?」


 それは……たしかにそうかもしれない。

二口女ふたくちおんな』である妹は後頭部にあるもう一つの口で九割九分、食事をする。

 その体質を他人に見られるのがいやで家に閉じこもっているのは知っているが、将来のことを考えたら少しでも外に出した方がいいのかもしれない。


「まあ、その時は僕がなんとかするよ」


「そう……。じゃあ、また明日ね」


「ああ、また明日な」


 僕はそう言うと、校門前まで早歩きで向かった。


 *


「なあ、そろそろ姿を見せてくれないか?」


 僕が校門前でそう言うと、僕の背後から声が聞こえた。


「はぁ……やっぱりバレていましたか」


「当たり前だ。あまり鬼の力を甘く見るな」


 僕の両肩に手を置いたのは『後神うしろがみ』だった。


「そうですね。次はもっとうまく尾行します」


 えっ? 何? 僕はこれからも尾行されるの?

 正直、やめてほしいんだけど。


「まあ、それはいいとして。僕に何の用だ?」


「あー、えーっとですね。その……私も先輩の部に入りたいなーと思いまして」


 やっぱりそうか……。

 まあ、僕にとっては好都合だから、別にいいんだけどね。


「そうか。じゃあ、名前を教えてくれないか?」


「あっ、はい。えーっと『うしろ 神奈かんな』です。先輩と同じクラスですが、先輩と同じクラスになりたくて飛び級しただけなので、先輩より一つ年下です」


 は? こいつ、僕と一緒のクラスになりたくて飛び級したのか?

 な、なんか怖いな……。

 というか、こんなやつ僕のクラスにいたかな?

 まあ、後神うしろがみだから、みんなに気づいてもらえてないんだろうな。


「なるほど。だいたい分かった。まあ、その……これからよろしくな」


「こちらこそよろしくお願いします」


 その後、彼女は僕の家の前までついてきたが、僕が威圧で吹き飛ばしたため、しばらくは尾行できないだろう。

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