お兄ちゃんの全部は私のものだよ。例え、血の一滴だろうと譲るつもりはないよ
登校中。
「な、なあ、夏樹」
「なあに?」
「どうして家を出てからずっと僕の腕に抱きついてるんだ?」
「昨日みたいにお兄ちゃんが神様に拉致・監禁されるかもしれないからだよ」
「あー、まあ、それはそうなんだが。これ、結構目立ってるぞ」
「目立ってた方が狙われにくいよ。まあ、たまーにお兄ちゃんを狙撃しようとする悪い虫がいるけどねー。ちなみに悪い虫の行方は誰も知らないよー」
「そうか。でも、それとこれとは話が別だ。さぁ、今すぐ僕から離れるんだ」
「お兄ちゃんは私のこと嫌いなの?」
「嫌いではない。ただ」
「ただ?」
「公衆の面前でこういうことをされると恥ずかしいんだよ」
「大丈夫だよ。兄妹ならこれくらい普通だよ」
「そ、そうかなー?」
「うん! そうだよ! あっ、お兄ちゃんのほっぺに蚊が!」
「え?」
朝から実の妹に平手打ちされてしまった。しかし、少しだけ気持ちよかったような気がする。
「お兄ちゃんの全部は私のものだよ。例え、血の一滴だろうと譲るつもりはないよ」
「虫に向かって何言ってるんだ? というか、もう死んでるし」
「ダメだよ、お兄ちゃん。ちゃんと分からせないと転生しても同じこと繰り返すんだから」
「そ、そうなのか?」
「うん、そうだよ。だから……今後一切お兄ちゃんの血を吸うなよ。この大量殺戮虫が!!」
ま、まあ、間違いではないけど、死んでる虫に向かってそういうこと言うやつほぼいないだろうな。
「夏樹、もうそろそろ学校着くぞー」
「はーい♡」




