固有神域……。そうですか。もう作れるようになったのですか
帰宅。
「おかえりなさい」
「げっ!? 童子!? なんで僕の部屋にいるんだ!?」
「いたらダメですか?」
「いや、別にそんなことはないけど。あれ? まだ夜なのか。というか、僕はいつからあっちの世界に行ってたんだ?」
「ね、ねえ、もう扉閉めてもいい?」
「いいよー!」
夏樹(僕の実の妹)がそう言うと虎姉(僕のいとこ。絡新婦)は僕たちが通ってきた穴を塞いだ。なるほど。合掌すると扉が閉まっちゃうからその間ずっと霊力を送り続けていたのか。
「お疲れ様! おばさん!」
「うっさいガキ」
「うえーん! このおばさん怖いよー。お兄ちゃん、なんとかしてー」
「まったく、こういう時便利よね。妹って」
「むっ! それ、どういう意味?」
「そのままの意味よ」
「ふーん、そうなんだ。へえー」
いつまたケンカが始まってもおかしくないなー。まあ、その時はまた屋根から落ちよう。
「なあ、僕があっちに行ってる間、みんなは何してたんだ?」
「うーんと、それはー。童子ちゃん、説明よろしく!」
「はい、分かりました」
おいおい、丸投げかよ。
「雅人さんが自室に入り、ベッドに横になってから数分後、雅人さんは何者かに誘拐されました。まあ、その直後に夏樹さんを叩き起こしたので雅人さんが天界まで運ばれたことはすぐに分かりました。問題はどうやって天界まで行くのかということでしたが、虎さんの糸で天界行きの扉と接続させることができたので夏樹さんを天界まで行かせることができました。その間、私たちは扉が閉じないように常時霊力を注いでいました。まあ、私はそれと同時に神様でも侵入できないような結界を構築していましたが」
「霊力消費量が半端なかったのはそれが原因だったんだねー! ひどいよ! 童子ちゃん!!」
「別にいいじゃないですか。結果的に扉を維持できていたのですから」
「そ、それは……そうだけど」
「えっと、つまり三人のおかげで僕はこっちの世界に戻って来られたんだな」
「まあ、そういうことです。それよりどうして夏樹さんの髪の色が黒から銀に変わっているのですか?」
「あー、えーっと、なんか覚醒しちゃったみたいなんだよねー。えっと、たしか固有神域? 作れるようになったよ」
「固有神域……。そうですか。もう作れるようになったのですか」
「ん? 今なんか言った?」
「いえ、何も。それより早く寝た方がいいですよ。明日も学校あるんですから」
「あー、そうだねー。じゃあ、おやすみー」
「はい、おやすみなさい。あー、忘れるところでした。雅人さん」
「なんだ?」
「おやすみなさい……チュ♡」
なあんだ、お、おやすみのキスか。あー、びっくりしたー。
「あー! 童子ちゃんがお兄ちゃんのほっぺにチューしたー!!」
「ダメですか?」
「うーん、ちょっと動揺してるお兄ちゃんの顔が見られたから許してあげる!」
「そうですか。では、おやすみなさい。あー、そうそう、私はいつでもあなたのことを見ていますからね?」
「お、おう、それは頼もしいな」
「ふふふふ、では、失礼します」
虎姉もう寝てるな。ありがとうって言おうと思ったのに。
「ねえ、お兄ちゃん」
「な、なんだ?」
「えっとね、私今すっごくお兄ちゃんに甘えたい気分なの。だ・か・ら……イチャイチャしよ♡」
「い、イチャイチャって。今日はもう遅いからそれは明日の夜に」
「私は今したいの。お兄ちゃんは今したくないの?」
「うーんと、僕は明日に備えて一刻も早く寝たいけど、お前の願いは叶えてやりたいと思っている。だから」
「抱き枕になれと言われたらそうする、かな?」
「ああ、その通りだ」
「そっか。じゃあ、それでお願いしまーす」
「りょーかい」
ああ、やっぱりお兄ちゃんのそばにいるとすっごく落ち着くなー。十秒以内に寝れちゃう……よ……。
寝るの早いな。というか、髪の色元に戻ったな。どういう仕組みなんだろう。うーん、まあ、いいや。おやすみ、夏樹。




