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あー、ダメだー。早くなんとかしないと……。

 あの後、夏樹なつき(僕の実の妹)はすぐに寝てしまった。虎姉とらねえ(僕のいとこ。絡新婦じょろうぐも)とババ抜きしたから疲れたのかな? それとも僕と一緒のベッドで眠れることが確定したからその時間を少しでも長くしようとしたのかな? まあ、別にどうでもいいけど。


「おーい、雅人まさとー。まだ起きてるー?」


 この小声は……虎姉とらねえだな。


「ん? あー、虎姉とらねえか。うん、起きてるよ。というか、いつから天井に張りついてたんだ?」


「さて、いつからだろうね。まあ、とにかくちょっと屋根の上まで来てよ」


「屋根の上? 分かった。すぐ行く」


「……お兄ちゃん、どこ行くの?」


 おっと、起こしちゃったかな? うーん、でも、夏樹なつきはぐっすり眠っているな。ということは、今のは寝言か。


夏樹なつき、少し待っててくれ。すぐ戻ってくるから」


 僕が夏樹なつきの頭を優しく撫でると夏樹なつきは嬉しそうに笑った。


「うん、分かったー♡」


 やっぱり夏樹なつきは誰よりもかわいい。実の妹じゃなかったらとっくに……。いや、やめよう。僕たちは実の兄妹

 なんだから。


 *


 屋根の上……。


虎姉とらねえ、いるかー」


「うん、いるよー」


「えっと、僕に何か言いたいことがあるのか?」


 虎姉とらねえは僕の顔を見ながら、真顔でこう言った。


雅人まさと、私あんたのこと男として好きなんだけど、あんたは私のことどう思ってるの?」


 直球だな……。まあ、なんとなく分かってたけど。


「なんとも思ってないよ。虎姉とらねえは僕のいとこで実の姉みたいなもの。ただそれだけだ」


「そう。じゃあ、今からあんたを襲うしかないわね」


「それって僕の童貞を奪うという意味か?」


「うん、そうだよ。まあ、暴れたら地獄を味わうことになるけどね」


「そうか。まあ、虎姉とらねえは今までいろんなやつとやってるから慣れてるよな」


「慣れてなんかないわよ」


「え?」


「私は今までそういうことしたことないわよ。経験あるのは暴走した私の分身だけよ」


「でも、その記憶はあるんだろ?」


「ないわ」


「消したのか?」


「ええ、消したわよ。経験してしまった私の分身の記憶じゃなくて私の分身そのものを、ね」


「そうか。でも、いいのか? 僕なんかで」


「あんた以外となんかしたくないわよ。というか、もうあんたにしか反応しなくなってるのよ。心も体も」


 それ、まずくないか? 体の機能、明らかにおかしくなってるだろ。


「そうか。でも、僕には心に決めた人がいるから」


「それって夏樹なつきちゃんのことだよね? やめといた方がいいよ。どうせ、いつか男作ってこの家から出ていくんだから」


「私、この家から出るつもりないよ」


「な、夏樹なつき!? どうしてここに!? というか、いつから聞いてたんだ!?」


「最初からだよ。それと、囚人のあんたにお兄ちゃんを襲う権利ないから」


「権利ねー。それってさ、あんたにもないよね?」


「ないけど、あるよ」


「は?」


「私はお兄ちゃんのことを愛している。お兄ちゃん以外、何もいらない。私とお兄ちゃんの恋路を邪魔するものは全て排除する。そして私とお兄ちゃんにとって都合のいい世界を作る」


「ふーん、そっか。なら、私もそうしようかなー」


「はぁ?」


「私もあんたと同じことをする。そうすれば、何も問題ないでしょ?」


「問題あるわよ! それと、お前という存在が目障めざわりだ! 今すぐここから出ていけ!!」


「そういうわけにはいかないんだよねー。ということで、とっとと消えてくれないかなー?」


「消えるのはお前の方だ! 早くここからいなくなれ!!」


「黙れ! キモウト!!」


 ※キモい妹の略。


「黙れ! ビッチ!!」


 あー、ダメだー。早くなんとかしないと……。

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