うん、お願い♡
ああ、私の大好きなお兄ちゃんがあんな罪人と一緒にお風呂になんか入ったら絶対穢れちゃう! あー、そうだ。そうなる前に殺ればいいんだ。ふふふふ、どうしてもっと早く気づかなかったんだろう。それじゃあ、さっそくあの女の体を引き裂きに行こう。
私がお風呂場に行くと服を脱いでいるお兄ちゃんの姿が目に飛び込んできた。あー、早く高校を卒業したい。一秒でも早くあの肢体で私をめちゃくちゃにしてほしい。あっ、やばい。お兄ちゃんの生脱衣を見てるだけなのに今にも愛の蜜が溢れそうになってる。た、耐えろ! 私の秘所! というか、出すなら唾液にしろ!!
「なあ、夏樹」
「な、なあに? お兄ちゃん」
「一緒に……さ、お風呂に入らないか?」
お、おおおお、お兄ちゃんが私を誘ってきたー! これはもうオーケーってことだよね!? そう解釈していいんだよね!? あっ、実はこれ夢オチってパターンじゃないよね? 大丈夫だよね? これ現実だよね? リアルだよね? 幻覚じゃないよね? お兄ちゃんに化けた妖怪じゃないよね?
「夏樹、大丈夫か? なんか顔赤いぞ?」
「き、気のせいだよ! さぁ、早く一緒にお風呂入ろう!」
「お、おう。あっ、確実に虎姉と一緒に入ることになるけどいいか?」
「うん、いいよ!」
もちろん嫌だけど、お兄ちゃんが入ってくる前に殺っちゃえば問題ないよね!!
「地獄に帰れ! 絡新婦ー!!」
「あー、ごめん。私、まだ帰りたくないんだよ」
あ、あれ? 体が動かない!? な、なんでどうして!?
「どう? 夏樹ちゃん。私しか作れない特殊な糸で作った蜘蛛の巣に引っかかった感想は……って、今しゃべれないよねー。うーん、やっぱり糸に麻痺毒塗らない方が良かったかなー?」
く、くそー! あと少しでこの女を排除できるのにー! うえーん! ミイラ取りがミイラになっちゃったよー! お兄ちゃん、助けてー!!
「虎姉、あまり夏樹をいじめないでくれ。夏樹は僕が絡むとちょっとおかしくなっちゃうけど、それ以外は普通だから」
「知ってるよ。ちょっとからかっただけだよ」
虎姉(僕のいとこ。絡新婦)が指をパチンと鳴らすと夏樹(僕の実の妹)は蜘蛛の巣から解放された。
「夏樹、大丈夫か?」
「う、うん、大丈夫。でも、まだ思うように体動かないよー」
まあ、嘘なんだけどね。
「そうなのか。じゃあ、僕が夏樹の体を洗ってあげるよ」
「うん、お願い♡」
「あっ、私も夏樹ちゃんの体洗ってもいい?」
「は?」
「あっ、いえ、なんでもないです」
うわあ、夏樹ちゃん殺意剥き出しだよー。おー、怖い怖い。
「お兄ちゃん、私の体隅々まできれいにしてね♡」
「ああ、任せろ」
キャー! お兄ちゃんかっこいいー! 「ああ、任せろ」だってー! あんなこと言われたら、もうお兄ちゃんしか愛せないよー! よし! 決めた! 今日こそ私の魅力でお兄ちゃんをメロメロにしちゃおう!!




