いるよ。
僕と虎姉(僕のいとこ。絡新婦)はシチューを食べた。他の子たちはカレーを食べた。虎姉が僕用のシチューを食べたいと言った時は疑問に思ったが、僕の手料理を食べたいと言っていたのを思い出したことでその疑問はきれいさっぱりなくなった。
「あー、雅人のシチューおいしかったなー。あっ、今のは別にそういう意味じゃないからね?」
「虎姉、小さい娘もいるんだから食器洗いながら下ネタ言うなよ」
「ごめんなさーい。次から気をつけまーす」
本当に反省してるのかなー? うーん、まあ、いいや。
「ところで虎姉はいつ地獄に帰るんだ?」
「え? 私、帰った方がいいの?」
「当たり前だろ。囚人なんだから」
「私を閉じ込めることなんてできないよ。私の分身や子蜘蛛たちはどこにでもいるし、蜘蛛が一匹でもいる限り、私は死なないから」
「前から思ってたけど、この星以外に蜘蛛っているのか?」
「いるよ。宇宙を食べるちっちゃな蜘蛛とかものすごーく小さなブラックホールを作っちゃう蜘蛛とか太陽の中で寝てる蜘蛛とか」
「いや、それ、もう蜘蛛じゃないだろ」
「蜘蛛だよ。まあ、生まれた場所や環境が特殊だったせいで変な方向に進化しちゃったやつばっかりだけどね」
「そうか。ちなみに虎姉はどこで生まれたんだ?」
「知りたい?」
「いや、やっぱいいや」
「えー! なんでー!?」
「深海とかマグマの中とか言いそうだからだよ」
「あー、えーっとねー、実は私も知らないんだよねー」
「は?」
「いや、ほら、妖怪って気づいたらそこにいるみたいな感じじゃん?」
「うーん、まあ、そうだな。で? 両親は……あー、ごめん。生まれた時に食べちゃったんだよな」
「そうそう。というか、地獄の炎で丸焼きにされてたんだよねー。何か悪いことしたのかなー?」
「さぁな。というか、虎姉の両親ってやっぱり蜘蛛なのか?」
「うーん、どうなんだろう。まあ、多分蜘蛛だと思うよ。じゃないと私、色んな糸出したり自分の分身や子蜘蛛を生み出したり操ったりできてないと思うから」
「そうか。まあ、とにかく通報されないように生活してくれよな」
「うん! 分かった!! あっ、そうだ。ねえ、雅人ー。あとで一緒にお風呂入ろう」
「嫌だと言ったら?」
「今夜、雅人と交尾する」
「はぁ……分かった。今日は一緒にお風呂に入ろう」
「わーい! やったー! ありがとう! 雅人! お姉ちゃん嬉しいよ!!」
「はいはい」
おっと、物陰から夏樹(僕の実の妹)がこっちを見てるぞー。というか、目見開きすぎだろ。まぶた壊れるぞ。




