アリシアちゃん、もし邪魔したら私が毎日作ってるお兄ちゃんのアルバム見せてあげないよ
僕の庭にいたイシクラゲを風呂場で洗ってやると人型になった。
「ありがとうございます。これでようやくあなたを私のものにできます」
「どういたしまし……ん? 今なんて言った?」
「私はずっとあなたを独占したいと思っていました。あー、早く私の愛であなたを包み込み、二人だけの楽園で一生暮らしたい。さぁ、雅人。今すぐ私の手を取ってください。そうすればあなたは確実に幸せになれますよ」
「……ふざけるな」
「はい?」
「僕の人生を勝手に決めるな! あと今すぐここから出ていけ!」
「嫌です」
「そうか。じゃあ、家出させてもらおう」
「ダメです。あなたはもう私のものなのですから一緒にいてください」
彼女はイシクラゲでできている長髪で僕を拘束した。
「なっ! は、離せ!」
「絶対に離しません。さぁ、一緒に幸せになりましょう」
くっ! このままではこいつにあんなことやこんなことをされてしまう。早く! 早く誰か来てくれ!!
僕が心の中で助けを求めると勢いよく風呂場の扉が開かれた。それと同時に黒い長髪がイシクラゲでできている長髪を貫いた。
「ああ! 私の髪が!! 覚悟しなさい、小娘! 今すぐ八つ裂きにしてあげますから!!」
「八つ裂き? なら、私はハチの巣にしてやるよ!!」
「小娘が……調子に、乗るなー!!」
「今すぐこの場から立ち去れ! この陰湿藍藻女!!」
普段は二口女の髪だが、今はどんな金属よりも硬い針女の髪になっている夏樹(僕の実の妹)バーサス、イシクラゲでできている髪を持つ人型イシクラゲか。うーん、まあ、今回は相手が悪かったな。
「くっ! どうして……どうしてこんな小娘なんかに私の愛が負けるのですか!!」
「それは私がお兄ちゃんの妹だからだよ。おばさん」
「お、おばっ! 私はまだ千歳です!!」
「いや、もうそれおばあちゃんじゃん。いや、仙人かな?」
「くー! 次こそはあなたにギャフンと言わせてみせます! それまで誰にも負けないでくださいね!!」
「はいはい、分かった分かった」
イシクラゲが風呂場から出ていくと夏樹は僕をギュッと抱きしめた。
「お兄ちゃん大丈夫? 変なことされてない? まだ童貞?」
「ああ、大丈夫だ。拘束はされたけど、変なことはされてないよ。あと、一応まだ童貞だ」
「そっか。なら、良かった。高校卒業したら速攻家に帰って私たちの子どもたくさん作ろうねー♡」
「あ、あははは、それはちょっと無理かなー」
「えー、なんでー? もう娘いるじゃん」
「えっと、そうしないとここに帰ってこれなくなるから仕方なく作ったんだよ」
「そっかー。なら、仕方ないね……とでも言うと思った?」
「え?」
「私もお兄ちゃんの子ども欲しいなー」
「いや、僕たち実の兄妹なんだが」
「細かいことは気にしなーい! さぁ、お兄ちゃん。脱ぎ脱ぎしましょうねー♡」
「ちょ! やめろ! 夏樹! ふざけるな!」
「私、本気だよ。この目を見て」
「あー、えーっと、お前の目の中にはハートマークしかないんだな」
「それは目の前にお兄ちゃんがいるからだよ。ほら、私の心臓触ってみて。ね? ドキドキしてるでしょ? これ、お兄ちゃんのせいだよ。ねえ、お兄ちゃん。責任取ってよ」
「いや、そ、それは……」
「お兄ちゃん……」
夏樹の目が僕の目にキスをしようとした時、上級吸血鬼のアリシア・ブラッドドレイン(金髪ロングの美幼女)がやってきた。
「おっ、やるのか? ついにやるのか?」
「やらないよ! それより早く助けてくれ!」
「我はただの傍観者だからな。期待するだけ無駄だ」
「そ、そんなー!」
「だが! お前は我の眷属だ! 眷属のピンチは我のピンチでもある! 故に我は! お前に救いの手を差し伸べるぞ!!」
「あ、アリシア……!」
「アリシアちゃん、もし邪魔したら私が毎日作ってるお兄ちゃんのアルバム見せてあげないよ」
「はぁ……まあ、頑張れ。我が眷属よ。お前ならきっとなんとかできる」
「アリシア、お前!!」
「お、に、い、ちゃん♡」
「な、なんだ? 夏樹」
「私の愛、受け止めて♡」
「や、やめろ……やめてくれー!!」




