雷獣の雷波
あっ、起きた。
「おい、大丈夫か?」
「……!!」
「待て待て。警戒するな。僕はただ、お前と話がしたいだけなんだ。なあ、お前はどうしてそんなに怒っているんだ?」
「……住処を壊された」
「何に?」
「……人間たちに壊された」
「あー、それってあれか? ゴルフ場か何かを作る予定地にお前の住処があるってやつか?」
「うん」
なるほど。よくある話だな。
「えっと、お前はたしか栃木県の代表妖怪だったな」
「うん」
「じゃあ、そこまで僕たちを案内してくれないか? お前が住処に戻らないとこのへんずっと停電してるだろうから」
「うん、いいよ。あっ、背中に乗っていいよ」
「え? いいのか?」
「うん。あっ、でも変なところ触らないでね」
「え? ということはお前は」
「言わせないでよ」
「あー、うん、分かった。じゃあ、行こうか。あっ、定員は何人だ?」
「百人くらいなら余裕だよ」
「そうか。分かった。えっと、お前の名前を教えてくれないか? あー、僕は『山本 雅人』だ」
「雷獣の雷波だよ。あっ、雷と波で雷波ね」
「分かった。よろしくな、雷波」
「うん、よろしく」
「よし、じゃあ、行くか!」
「うん!!」
彼女はニコッと笑うと僕たちを背中に乗せてくれた。これ以上、大事にならないといいなー。




