おはようのキスをしてもいいか?
どこからか聞こえてくる。聞き覚えがあるようなないような声だ。
「これは酷いな。とてつもなく大きな力が少年の体内をぐちゃぐちゃにしている。今すぐなんとかしなくては。あっ、そうだ。おい、少年。我の眷属にならないか?」
「……ケン、ゾク?」
「ああ、そうだ。眷属だ。まあ、我の弟になると思えばいい」
「弟……?」
「まあ、とりあえず仮契約だけ済ませておこう。真の契約はお前がもう少し大きくなったらしてやる」
「カリケイヤク?」
「言葉の意味は分からなくていい。重要なのはお前が我の眷属にふさわしいか否かだ。よし、では始めるぞ。少年、目を閉じろ」
「うん、分かった」
「よし、いい子だ。では、我の力を少しだけ分けてやろう。死ぬなよ、少年」
ああ、そうだ。僕は幼い頃、あいつの力を少し分けてもらった。そのおかげで僕は今日まで生きてこられたんだ。
昔の記憶を少しだけ思い出した直後、僕の命の恩人に叩き起こされた。
「起きろ! 朝だぞ!! 雅人!!」
「うるさいなー。頼むから静かにしてくれよー」
「お前が起きれば静かにしてやろう」
「はいはい、分かりましたよー。あー、よく寝たー」
「おはよう、雅人。さぁ、とっとと着替えろ! 遅刻するぞ!」
「はいはい」
「おい、雅人」
「なんだ?」
「おはようのキスをしてもいいか?」
「え? あー、いいぞ」
上級吸血鬼のアリシア・ブラッドドレイン(金髪ロングの美幼女)は僕の額に優しくキスをすると、ニコッと笑った。
「よしよし、これでようやく今日という日が始まったな」
「そうか。よし、じゃあ、さっさと着替えるか」
あっ、昔の記憶を少しだけ思い出した件言ってないな。うーん、まあ、いいや。どうせ一緒に学校に行きたいとか言うだろうから登校中に話そう。




