……先輩
今日はいい天気だなー、天気予報では昼頃に雨降るって言ってたけど、置き傘があるから大丈夫……と思っていたが。
「だーれかさーんが、だーれかさーんが、ぼーくの傘を持ってったー」
土砂降りの中、家まで帰れば高確率で風邪をひく。
はぁ……困ったな……。
用事のない者は次々と下校していく。
僕は一応、とある部に所属しているが、今日は特に依頼がなかったため、お開きとなった。
「はぁ……どうしようかなー」
僕がポツリとそんなことを言うと、誰かに声をかけられた。
「先輩、もしかして傘ないんですか?」
僕が振り向くと、心配そうにこちらを見つめる白髪ショートヘアと黒い瞳と小柄な体型が特徴的な少女がいた。
「え? あー、まあな」
声の主は『雪女 葵』だった。
「えっと……その……途中まで一緒に帰りませんか? しばらく止みそうにないですし」
「え? いいのか?」
彼女はコクリと頷く。
「じゃあ、お言葉に甘えようかな」
「分かりました。では、参りましょう」
もう少し気軽に接してくれてもいいのだが。
まあ、いいか。
*
「先輩、もう少し私の方に近づかないと濡れてしまいますよ?」
「え? いや、僕がそっちに行くと今度は雪女さんが濡れちゃうでしょ?」
彼女は「そ、そうですね」と言うと、しばらく何も言わなくなってしまった。
「……あの……先輩」
「ん? なんだ?」
急にしゃべり出したな。
「先輩の妹さんって……可愛いですか?」
「え? あー、可愛いよ。まあ、今はひきこもってるんだけどね」
なんで今、そんなことを。
「……先輩」
「ん?」
彼女は急に立ち止まった。
その後、一瞬で僕の体を凍らせた。
「……今から先輩をうちに連れていきます。安心してください、すぐに終わりますから。まあ、聞こえてないでしょうけど」
彼女はそう言うと、凍った彼を宙に浮かせた。
その後、彼女は自宅まで彼を運んだ。




