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変な声出すなよ
ま、雅人の手が我の体を洗っている! ああ、なんだろう……すごく気持ちいい。自分で洗う時はなんともないのに。
「アリシア、大丈夫か?」
「だ、大丈夫だ! 続けろ」
「分かった」
うーむ、不思議だ。今までこんなことはなかったのだが。
「なあ、アリシア」
「なんだ?」
「お前は昔の僕を知ってるんだよな?」
「ああ、知っているぞ。お前が生まれる前から」
「それって胎児だった頃ってことか?」
「いや、違う。我はお前が卵だった時から知っている」
「そっか。じゃあ、夏樹と同じだな」
「なに? あの小娘も我と同じなのか?」
「ああ。まあ、本当かどうか分からないけどな」
「ふむ、そうか。おい、雅人。背中だけでなく前も洗え」
「え? 前も? 前は自分で洗えるだろ」
「う、うるさい! いいから早く洗え!!」
「別にいいけど、変な声出すなよ」
「ああ! 分かった!!」




