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鈴蘭ちゃん

 帰宅途中、例の白いの名前を思いついた。


「なあ、シロツバメエダシャク」


「何ですか?」


「これからお前のこと『鈴蘭すずらん』って呼んでいいか?」


鈴蘭すずらんですか。いい名前ですね!」


「そうか。なら、良かった」


 僕の肩の上に乗っている鈴蘭すずらんは触覚をピコピコ動かしている。僕がつけた名前、気に入ってくれたみたいだな。福与ふくよ(僕と『はじまりの座敷童子』の娘)は僕の頭の上でスウスウと寝息を立てている。というか、こいつ軽いな。体重何キロなんだろう。

 上級吸血鬼のアリシア・ブラッドドレイン(金髪ロングの美幼女)は僕の手をキュッと握っている。ギュッではなくキュッだ。しっかし、小さな手だなー。まあ、見た目は明らかに小学生だからなー。


「おい」


「なんだ?」


「その……怖くないのか?」


「え?」


われは一応、上級吸血鬼だ。いつお前を襲うか分からないぞ」


「僕はお前の眷属だ。お前が暴走しても僕は逃げも隠れもしないよ」


「そ、そうか」


「ん? お前、なんか顔赤いぞ? 大丈夫か?」


「き、気のせいだ!」


「そうか。なら、いいんだけど」


 な、なんだ? なぜこんなに胸が苦しいんだ? われはいったいどうしてしまったんだ?


「な、なあ、雅人まさと


「なんだ?」


「す、少し熱があるような気がするのだが、これは風邪というやつか?」


「うーん、どうだろう。ちょっと熱を計ってもいいか?」


「あ、ああ、いいぞ」


「じゃあ、失礼して」


 僕は彼女のひたいに自分のひたいを押し当てた。


「なっ! ち、近い! 近いぞ! 雅人まさと!」


「気にするな」


「気にするわ!!」


「うーん、熱はないな。でも、やっぱり顔赤いな」


「そ、そうなのか?」


「ああ、まるで誰かに恋してる女の子みたいだ」


「こ、ここここ、恋だと!?」


「ああ、なんかこう、久々に好きな人に会ったら今まで胸に秘めていた思いが一気に全身を駆け巡って……って、ちゃんと聞いてるか?」


「そ、そんな! われは……われは……そんな少女漫画のヒロインではなーい!」


「ちょ! どこ行くんだよ! アリシア!!」


「はっ! あー、すまない。われとしたことが少し取り乱してしまった」


「いや、それは別にいいんだよ。で、どうだ? 体調の方は」


「え? あー、今はなんともないな。全て正常に機能している」


「そうか。良かった」


 はっ! ま、まただ! 雅人まさとの笑顔を見たらまた胸が苦しくなった。でも、別に不快ではないな。

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