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解除しま……されます!

 僕は犯人がいる部屋の扉をゆっくり開けた。例の白いは僕の肩の上に乗っている。まあ、もちろん小さくなっているが。


「あなたが今回の事件の犯人ですよね? 担当教科、理系全般の『時神ときがみ うつろ』先生」


「『山本やまもと 雅人まさと』くん。私は今、自分の夢を叶えようとしているんだ。邪魔をしないでくれ」


「それはあなたが妖怪になれば叶えられますよ」


「たしかにそうだね。しかし、それでは歴史に名を残せないんだよ」


「歴史に名を残したところであなたはきっとそれで満足しませんよ。なぜなら、あなたは」


「欲望に支配されているから、だろう? そんなことは分かっているよ。しかし、それは私の体の一部なのだよ。それがないと私は私ではなくなってしまう。だから、そのを私に渡してくれないか? 私にはそのの力が必要なんだ」


「それはできません」


「なぜだ?」


「あなたが『そのの力が必要だ』と言ったからです」


「ふむ、なるほど。つまり、あれか? 私のような頭のおかしい四十路よそじおじさんには渡せないということか?」


「違います。あなたが彼女のことを見ていないからです」


「彼女? あー、そののことか」


「はい、そうです」


「はぁ……君は一生こちら側には来れないな」


「構いません。僕はあなたのようにはなりたくありませんから」


「そうか。しかし、ここは私の理科室テリトリーだ。いくら君が強くても強力な呪力が込められた結界から出ることはできない」


「たしかに僕一人では無理ですね。ということで、少し神様の力を使わせてもらいます」


「神様? ま、まさか! そいつは!!」


福与ふくよ、結界の上書き頼む」


「うん、いいよ。えいっ!!」


 彼女がそう言うと、おどろおどろしい紫色の結界は一瞬で真っ白になってしまった。


「な、なんということだ……妖怪を根絶するために作った私の最高傑作がこうもあっさりと上書きされるとは」


「そんなに落ち込まないでください。今回は相手が悪かっただけです」


「相手が悪かった、か。はぁ……まったく、やはり君は私の手でどうこうできる存在ではないな」


「そうですか? 別に普通だと思いますけど」


「はぁ……雑草は向日葵ひまわりにはなれないんだな」


「え?」


「なんでもない。さぁ、私を逮捕してくれ」


「逮捕? 僕たちは今ここに来たばかりですよ? 何かあったんですか?」


「……まったく、君というやつは。いや、何もなかったよ。そう、何も……ね」


「そうですか。では、失礼します」


「ああ」


 僕たちが部屋から出ると例の白いが女体化した。


「いきなりどうした?」


「え、えーっと、こ、こうしたいからです!!」


 彼女は僕のひたいにキスをすると僕に抱きついた。


「えっと、今のは……」


「か、感謝の気持ちです!!」


「じゃあ、ハグは?」


「あなたのぬくもりを忘れないようにしたいからです!」


「そうか。ところでもう帰れそうか?」


「帰りたくありません! というか、帰れません!」


「え? なんでだ?」


「お見合いが嫌で地獄からこっちに来たからです!!」


「そうなのか。じゃあ、うちで面倒を見よう」


「え!? いいんですか!!」


「今さら一匹増えても問題ないよ」


「そ、そうですか。え、えっと、ありがとうございます。このご恩は一生忘れません!!」


「大袈裟だなー。ところでいつになったら元に戻るんだ? もしかしてずっと時間止まったままなのか?」


「うーんと、もう少ししたら解除しま……されます!」


「あー、そうか。なら、それまでこのままでいようか」


「そうしてもらえると助かります!!」


 い、言えない。なぜか雅人まさとさんと出会ってから自分の力を制御できるようになっただなんて。

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