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時を止める虫
学校に着くと時が止まっていた。正確には僕と福与(僕と『はじまりの座敷童子』)以外のだが。
「えーっと、これはいったい」
「虫がいる」
「え? 虫?」
「うん、時を止める虫。主な生息地は地獄だよ」
「地獄にいる虫か。強そうだなー」
「強いよ。太陽の中とか真空状態でも生きられるよ」
「え? それ本当に虫なのか?」
「地獄にいる生き物は全部、不死鳥の炎を食べて育つからみんな強いよ」
「そうか……。えっと、それでこれからどうすればいいんだ? 虫を捕まえればいいのか?」
「捕まえなくていいよ。でも、多分泣いてるからあまり刺激しない方がいいよ」
「お前、昨日生まれたばかりなのに物知りだな」
「そうかな? これくらい普通だよ」
「そうか。えっと、ちなみにその虫の見た目は」
「蛾だよ」
「蛾か……」




