娘です♡
次の日の朝。
「……んー? あー、もう朝か。あっ、そういえば修行しないといけないなー。鬼姫、起きてるかなー?」
「おはよう」
「あー、おはよう。鬼姫」
「あんた、わざわざ布団敷いて寝たの?」
「え? あー、まあ、姫凛と一緒のベッドで寝るわけにはいかないからな」
「一応、実の娘なのに?」
「女の子はいずれ家を出ていくものだからな」
「あんた、まだ高二でしょ? なんでそこまで見据えてるのよ」
「さぁ? 妹がいるからかな?」
「あっ、そう。で? あんたのとなりにいるのは誰なの?」
「となり? あー、福与だな」
「福与?」
「ああ、昨日『はじまりの座敷童子』のところに行った時に色々あって生まれたのがこの子だよ。僕の記憶が正しければ僕のクローンにこの子の世話を頼んだはずなんだが」
「でも、この子はそれが嫌でここに来た」
「だろうな。あっ、起きた」
「あー、あー」
「おはよう、福与。よく眠れたか?」
「あー!」
「そうか。それは良かった。えっと、お母さんはどこにいるんだ?」
「アレはたしか白い空間から一生出られないはずだからこの子だけそこから出したんじゃないの?」
「そう、なのかな」
「あー! あー!」
「あー、はいはい、どうしたんだ? 福与。お腹空いたのか?」
彼女がぐいっと僕に顔を近づける。あっ、これ絶対キスするな。
「お兄ちゃん! おはよ……」
「……チュ♡」
あっ、まずい……。タイミング悪すぎる……。
「あー、えっと、これはだな……」
「わーたーしーのー……」
「お、おい、夏樹」
「わーたーしーのー……」
「おーい、夏樹。夏樹さーん」
「私のお兄ちゃんに何してんのよ! この白髪こけしー!!」
「……白髪? 白髪または白髪と言え! 無礼者!!」
あれ? こいつ、もうしゃべれるのか?
僕が心の中でそんなことを言っている間に夏樹(僕の実の妹)は部屋の外の壁まで吹っ飛ばされていた。
「今のなかなかいい衝撃波だったよ。でも、私はこんなんじゃ倒せないよ?」
「面白い。では、時間をかけて屈服させてやろう」
両者共に狂った笑みを浮かべながら睨み合っている。よし、止めよう。
「はい、そこまでー。朝からケンカなんてみっともないぞ」
「で、でも!」
「夏樹、すぐに手を出す癖どうにかした方がいいぞ」
「うう……はーい」
「あー、あー」
「お前、それ演技なのか?」
「あー?」
自分の髪をバカにされるとキレるのかな? よし、覚えておこう。
「そうか。演技じゃないのか」
「ねえ、お兄ちゃん。その子誰なの?」
「あー、えーっと、この子は福与、僕の」
「娘です♡」
「む、娘ー!?」
あっ、またしゃべった。どうしても言いたいことがある時にだけしゃべれるみたいな感じなのかな?




