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少しだけ変化した
僕が姫凛(僕と凛の娘)の歯を磨こうとすると姫凛は僕にこう言った。
「ねえねえ、おとーたん。血、吸わせてー」
「え? 今ここでか?」
「うん!」
ず、ズルい! そんな無邪気な笑顔を向けられたら断れないじゃないか!
「え、えっと、あんまり吸いすぎるなよ」
「うん!」
「えーっと、首筋でいいか?」
「うん、いいよ!」
「そうか。じゃあ、はい、どうぞ」
僕がしゃがむと姫凛は嬉しそうに両手を振り上げた。
「わーい! いただきまーす! あーむっ!」
「どうだ? おいしいか?」
「うん!!」
「そうか」
僕の血を吸った後、彼女は少しだけ変化した。まあ、見た目は全然変わっていないのだが。
「お父さん、歯磨きしてー」
「はいはい」
「ねえ、お父さん」
「ん? なんだ?」
「私の口の中、隅々まできれいにしてね?」
「え? あー、うん、分かった」
もう少し違う言い方はできなかったのだろうか。まあ、いい。歯磨きに集中しよう。




