キジムナー
僕たちが春巻きを食べているとチャイムが鳴った。なんで晩ごはん時に訪ねてくるのかなー。僕はそんなことを考えながら玄関の扉を開けた。
「あっ! あなたが雅人さんですか?」
「え? あー、まあ、そうだけど」
「良かった! では、今すぐ沖縄まで来てください! 私の友人や家族が行方不明になっているんです!」
「え? 今から? というか、君キジムナーだよね?」
「はい! そうです!」
「えっと、そういうのはシーサーに頼めばいいんじゃないのかな?」
「シーサーはすでに負けてしまいました! お願いします! あなただけが頼りなんです!」
「十干とか退治屋に頼めばいいじゃないか」
「十干は修行中で退治屋は私を捕まえて売ろうとしました」
「あー、そうか。前者はまあ、しょうがないけど後者は最低だな」
「えっと、もしかして食事中でしたか?」
「あー、まあ、そうだな」
「そうでしたか。あのー、ここまで飲まず食わずだったのでその、ぜひお恵みを」
「あー、うーんと、嫌いな食べ物は?」
「タコとニワトリです」
「そうか。えっと、たしか魚の目玉が好物だったな。今日のメインは春巻きだけど、『ししゃも』あるぞ」
「ありがとうございます! いただきます!」
赤くて丸い毛玉のような外見のキジムナーは僕の肩に乗ると嬉しそうに体を揺らし始めた。
「で? 行方不明になった原因は何なんだ?」
「それは……もぐもぐ……おそらく……もぐもぐ……吸血木……もぐもぐ……だと思います!」
「えっと、いつのまにか高貴な存在になってる方の吸血鬼じゃなくて樹木子の仲間みたいな方の吸血木か?」
「はい! そうです! あー、おいしい! 生き返りますー!」
シーサー、キジムナー、吸血木……。ここにアカマタが加われば完璧にあの話になるな。
「なあ、童子」
「何ですか?」
「座敷家って人工衛星持ってるか?」
「サテライトレーザーを使うつもりですか?」
「そうか。あるんだな」
「ありますが、あまりオススメしません」
「どうしてだ?」
「世界各国に目をつけられる可能性があるからです」
「えっと、もうすでに僕と鬼姫の様子をずっと監視してる人工衛星がいくつかあるんだが」
「現状を維持できるかはあなたの判断次第だということです」
「そうか。なあ、鬼姫」
「なあに?」
「お前の鬼火って妖怪にも効くのか?」
「効くわよ」
「そうか。じゃあ、それを沖縄にいる吸血木めがけて投げてくれ」
「あたしに火力とか威力の調整できると思う?」
「あー、じゃあ、今すぐ童子と一緒に沖縄旅行に」
「嫌よ。こんなちんちくりんと旅行したらちんちくりんが感染るわ」
「私も反対です。まあ、雅人さんが同行するのなら話は別ですが」
「え?」
「あっ、それならあたしもいいわよ」
「え?」
「雅人さん、お願いします」
「えー」
「お願いします! このままだと一つの種族が滅びてしまいます!」
「あー! もうー! 分かったよ! 行けばいいんだろ! 行けば!」
「ありがとうございます! 夏休みになったらぜひ遊びに来てくださいね!」
「夏休みか……。まあ、考えておくよ」
さてと、ちゃっちゃと終わらせるか。




