表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
834/1938

空鬼

 はぁ……やっと放課後だ……。


「放課後だー! 雅人まさとー! 早く帰ろうよー!」


「え? ああ、そうだな」


「どうしたの? 顔色悪いよ?」


 主にお前が原因だなんて言ったら責任感じそうだから言わないでおこう。


「大丈夫。いつものことだから」


「そうなの?」


「ああ、そうだ」


「そっか。なら、いいけど」


 姫凛きりん(僕とりんの娘)がうちの高校の生徒になると言い出した時は少し焦ったが、なんとかやっていけそうでほっとした。


「よし、じゃあ、帰るか!」


「うん!」


 僕たちが教室から出ようとすると黒板から何かが出現した。


「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


「な、何あれ!! もしかして鬼!?」


姫凛きりん! 逃げるぞ!」


「う、うん!!」


 あの鬼、黒板というか黒い穴から出てきたな。もしかしてあいつは空間をこじ開けたのか?


姫凛きりん! 窓から飛び降りるぞ!」


「え!? 窓から!? 危ないよ!!」


「あいつに殺されるよりかはマシだ。さぁ、僕の背中に乗るんだ!!」


「う、うん」


 今の僕には鬼の力も妖怪の力も使えない。殺意を込めたこぶしが当たれば大ダメージを与えられるが、当たらなければ僕はおそらく死ぬ。そしておそらく姫凛きりんも死ぬ。それは絶対にあってはならない。


「よし、行くぞ!!」


「うん!」


 僕は廊下の壁や窓ガラスを割りながらこちらに迫ってくる鬼が僕たちを攻撃する前に窓から飛び降りた。あと少し判断が遅れていたら僕たちは死んでいただろう。だが、安心するのはまだ早い。うまく着地できなければ追いつかれる。


「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


 例の鬼が僕たちを鋭い爪で引き裂こうとした時、こけしのような見た目の妖怪が現れた。


「まったく、地獄のセキュリティはガバガバですね」


 彼女は例の鬼を鎖で拘束すると僕たちを両手で受け止めた。まあ、彼女の両手ではなく彼女が作った大きな両手だが。


「ありがとう、童子わらこ。助かったよ」


「まったく、今のあなたはほぼ人間なんですからあまり無茶をしないでください」


「いや、でもそうしないと死にそうだったから」


「うわああああああああああん!! 怖かったよー!」


「おー、よしよし、怖かったなー。ところでこの鬼は何なんだ?」


「空間を切り裂き、空間を食らう鬼……空鬼くうきです」


空鬼くうき? そんなのいるのか?」


「地獄にしかいません」


「え? じゃあ、地獄からこっちの世界に来たってことか?」


「でしょうね。まあ、普通なら地獄の結界に弾かれるのでこちらの世界に干渉することはできません。ですが、これはそれを突破してきました」


「それって地獄の結界が機能してないってことか?」


「いえ、機能はしています。ただ、結界に何らかの欠陥があるのかもしれません」


「それ、かなりまずくないか?」


「非常にまずいです。このままだとこの世は地獄と化します」


「そうか。なら、早くどうにかしないといけないな」


「安心してください。私がなんとかしますから」


「分かった。あっ、そうだ。なあ、童子わらこ


「何ですか?」


「春巻き作る約束、忘れてないよな?」


「もちろんです」


 彼女はそう言うと空鬼くうきと共に地獄に行ってしまった。童子わらこ、一人で大丈夫かなー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ