山本 姫凛
うちのクラスに転校生がやってきた。まあ、僕の娘なんだが。
「はじめまして! 『山本 姫凛』です! どうぞよろしくお願いします!!」
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
主に男子の歓声が教室を飛び交っている。気持ちは分からなくもないが、そこまで嬉しいものなのか?
「あっ、ちなみに私の席は雅人くんの膝の上なので机と椅子はいりません!!」
『はああああああああああああああああああああああ!?』
あっ、今度は女子の声もそこそこあったな。
「おい、山本! どういうことだ! 説明しろ!!」
「そうだ! そうだ! お前ばっかりズルいぞ!!」
「ひどいよ、雅人くん! 私というものがありながら、こんな小娘を選ぶなんて!!」
「この女狐め! 雅人に手を出したら承知しないわよ!!」
僕は心の中で返答した。説明はしたくない。いや、ズルいってそうしないと今僕はここにいないんだが。えっと、誰だったかな。なんで呼び捨てなんだよ。
「あのね、私は山本くんのそばにいないと死んじゃうの! だから、許して。ね?」
「そんなの信じられるか!」
「そうだ! そうだ!」
「雅人くん、騙されないで! どうせ雅人くんの体目当てなんだから!」
「雅人、安心して! 私がなんとかするから!」
男子のは当然の反応だけど女子どうした?
「はぁ……仕方ない。アレを使おう」
「え? なんだって?」
「聞こえないわよ! もっと大きな声で言いなさいよ!」
あー、これはまずいな。
「眠れ」
その直後、僕と彼女以外、全員眠ってしまった。彼女は僕の席までやってくると元の姿に戻った。
「お疲れ様」
「ありがとうございます。ところで私はちゃんと姫凛ちゃんになりきれていたでしょうか」
「ああ、なんか敬語を覚えた姫凛っぽかったぞ」
「そうですか」
「なあ、童子」
「何ですか?」
「表情筋、大丈夫か?」
「普段使わない筋肉なので少し痛いです」
「マッサージしてやろうか?」
「お願いします」
「分かった。あっ、その前に一つ教えてくれ。こいつらが目を覚ましたらどうなるんだ?」
「少し記憶を弄ったのでクラスメイトは全員彼女のことを崇拝します」
「崇拝って、お前な……」
「嫌われるよりかはマシでしょう? 雅人さん、そろそろ」
「はいはい」
その後、僕は座敷童子の童子の表情筋を両手でほぐし始めた。童子の肌っていつ触ってもモチモチしてるな。なんか癖になりそうだ。




