学校から帰ったら一緒に春巻きを作りましょう
僕たちが玄関で靴を履いていると姫凛(僕と凛の娘)が泣き始めた。
「おとーたん! わたちを置いていかないで!!」
「大丈夫だよ。夕方になったら帰ってくるから」
「やっ! わたちも一緒に学校行く!!」
「うーん、姫凛はうちの学校の生徒じゃないから行ってもやることないぞ」
「別にいいよ! おとーたんと一緒にいたいだけだから!」
「いや、だからお前を教室に連れていくと厄介なことになるんだよ」
「それってどういう意味?」
「えっと、学生の本分は勉強なんだよ。で、もしお前が僕と凛の子どもだってことが先生や他の生徒にバレたらどうなると思う?」
「ど、どうなるの?」
「頭おかしいと思われる」
「どうして?」
「普通じゃないからだよ」
「普通じゃない?」
「普通の学生は子持ちじゃないからだよ」
「え? そうなの?」
「ああ、そうだ。だから、お前は僕たちが帰ってくるまでお留守番してないといけないんだ」
「やっ!」
「そうか。じゃあ、こうしよう。姫凛、お母さんの霊力を少し分けてもらえ」
「やっ!」
「ガーン!」
また凛(狐っ娘)がショックを受けてるな。
「まあ、そう言うな。いいか? お前の体内には僕と凛、両方の霊力がある。だから、普段から両方の力を摂取しないとお前は僕と凛の力を使えないんだ。だが、お前は生まれてから一度もお母さんの霊力を口にしていない。つまり、今のままだと凛が持ってる『変化』の力を使えないんだよ」
「え? そうなの?」
「ああ、そうだ。それにもし使えたとしてもその効果は長続きしないと思うぞ」
「そっか。えっと、わたちがその力を使えるようになったらおとーたんと一緒に学校行けるの?」
「ああ。けど、必然的に転校生になるぞ。それでもいいか?」
「うん! いいよ! ねえ、おかーたん! おかーたんの霊力ちょうだい!!」
「私なんてどうせいらない存在なんです」
「そんなことないよ! ほら、早く肩出して!」
「え? あー、はい」
「よし! それじゃあ、いただきまーす!」
「え? え? そ、そんないきなり! あー!」
凛の霊力を吸った姫凛は『変化』できるようになった。
「童子」
「何ですか?」
「今日から姫凛をうちの学校の生徒にしたいんだけど」
「はぁ……分かりました。手続きの方は私がしておきます」
「ありがとう、童子。お礼は何がいいかな」
「では、あなたをください」
「え?」
「……冗談です。学校から帰ったら一緒に春巻きを作りましょう」
「ああ、分かった」
「約束ですよ」
「ああ! それじゃあ、いってきます!」
「いってらっしゃい」
さてと……。
「姫凛さん」
「なあに?」
「あなたの制服と学生カバンです。受け取ってください」
「うわあ! すごーい! 今どこから出したの?」
「秘密です。それと、お二人のことはおとーたん、おかーたんではなく名前で呼んでください。あー、あと自己紹介は私がやりますのであなたは私がいいと言うまでとなりの教室にいてください」
「分かった! じゃあ、いってきま……」
「変化をしてください」
「え? あー、うん、分かった。えーいっ! それじゃあ、いってきま」
「制服を着てください」
「あー、うん、分かった。とうっ!」
「早着替えですか。やりますね」
「まあねー。それじゃあ、いってきまーす!」
「はい、いってらっしゃい」
ふぅ……昨日のうちに色々済ませておいて正解でしたね。それにしても何やら妙な気配を感じますね。何も起きなければ良いのですが。




