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舐めなさい

 太陽がおはようと元気よく挨拶あいさつし始めたため今日の修行は終わった。


「なあ、鬼姫きき


「なに?」


「お前、なんか疲れてないか?」


「つ、疲れてなんかないわよ! あたしを誰だと思ってるの!」


「いや、でもなんか顔色悪いぞ?」


 僕が彼女のひたいに手を当てると彼女は僕の手を振り払った。


「触らないで!!」


「あっ……」


「え? あっ、ごめん! 手、大丈夫?」


「大丈夫、大丈夫。手首が折れただけだ」


 え? ちょ、ちょっと待って。


「ね、ねえ」


「なんだ?」


「その、痛くないの?」


「え? あー、そういえば痛くないな。どうしてだろう。殺意がなかったからかな?」


「あ、あんた人間よね?」


「半分……いや、もしかするともうほとんど妖怪なのかもしれないな。あー、別にお前のせいじゃないぞ。僕がお前の力を制御できなかったのが悪いんだ」


「そういう問題じゃないわよ! ねえ、怖くないの?」


「ん? 何がだ?」


「あんたはこれからどんどん化け物になっていくのよ? 怖くないの?」


「今までずっとそんな感じだったから別に怖くないよ」


「あたしのこと恨んでいいわよ」


「うーん、お前の力がなかったら僕はここにいないから恨みはしないよ」


「そう。なら、あたしを殺していいわよ」


「なんでそうなるんだ?」


「あたしが辛いからよ」


「今の僕がお前を殺すのは無理だ」


「そうね。でも、ダメージを与えることはできるわ」


「え? そうなのか? じゃあ、今疲れてるのは」


「あんたにたくさん殴られたからよ」


「そうだったのか」


「でも、殺意がないこぶしは効いてないわ」


「そうか。じゃあ、明日から寸止めにしよう」


「ダメよ。そんなんじゃ、いざという時役に立たないもの」


「そうかなー?」


「そうよ。さぁ、早く汗流してきなさい」


「ああ、分かった。あっ、そうだ。なあ、鬼姫きき


「なに?」


「あとで手首の治し方教えてくれ」


「あー、そういえばあんた手首折れてたわね。えっと、じゃあ」


 彼女は自分の口に人差し指を突っ込むと人差し指の先端に唾液をつけた。その後、彼女は口から人差し指を出した。


「はい、どうぞ」


「え?」


「舐めなさい」


「え?」


「え? じゃない。早く舐めなさい」


「それを舐めれば治るのか?」


「ええ、そうよ。ほら、早く」


「わ、分かった」


 僕が彼女の唾液を舐めると彼女は僕の頭を撫でた。


「手首、どう?」


「え? あっ、すごい! 治ってる!!」


「そう。良かったわね」


「ありがとう! 鬼姫きき! 助かったよ!」


「大袈裟。ほら、早く汗流してきなさい」


「ああ!」


 弟がいたらこんな感じなのかしら……。まあ、あたしはこの土地の負のエネルギーのかたまりだから、そんなのいないんだけどね。

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