旦那様……しゃがんでください
その後、なんだかんだあったが一線を超えることはなかった。いやあ、よかった、よかった。
「おとーたん! 一緒に寝よう!!」
「え? 僕と? 凛じゃダメなのか?」
「ダメじゃないけど、おかーたんは多分一人で寝たいだろうから」
「ん? それってどういう意味だ?」
「おかーたーん、おとーたんに言っていい?」
「だ、ダメです! 絶対に言わないでください!!」
「はーい。それじゃあ、行こっか♡」
「お、おう」
姫凛(僕と凛の娘)と一緒に二階へと向かう僕の背中を凛(狐っ娘)は悲しそうな表情を浮かべながら見ている。
「姫凛、先に行っててくれ。ちょっと水を飲みたくなったから」
「え? あー、うん、分かったー」
僕は姫凛が視界からいなくなるのを待った。まあ、おそらく彼女には僕がこれから何をするのか分かっているだろうが。
「……凛」
「だ、旦那様……」
「一緒に寝ないか?」
「え?」
「別に嫌だったらいいんだけど」
「嫌じゃないです!」
「じゃあ、どうして姫凛はあんなことを言ったんだ?」
「そ、それは……」
彼女は僕のそばまでやってくると、僕をギュッと抱きしめた。
「旦那様……しゃがんでください」
「分かった」
彼女は僕の耳元でこんなことを言った。
「せっかく旦那様に体をきれいにしてもらったのに私は今、発情しています。こんないやらしい私をどうかお許しください」
「え? それってつまり一人で〇〇するつもりだったってことか?」
「は、はい……」
「そうか。えっと、何か僕に手伝えることはないか?」
「えっ?」
「いや、ほら、手は一人二つしかないから」
「あー、えーっと、旦那様のそばにいれば大丈夫だと思います」
「え? そうなのか?」
「はい。本当は姫凛ちゃんに譲らないといけないんですけど」
「譲る? 凛は姫凛のお母さんだけど一人の女の子でもあるんだから別に遠慮する必要なんてないぞ。ほら、あいつも言ってただろ? おかーたんは恋のライバルだって」
「そう、ですね。そうですよね。えっと、じゃあ、私と一緒に寝てくれますか?」
「ああ」
「あ、ありがとうございます! 私、今とっても幸せです!」
「大袈裟だなー。じゃあ、行こうか」
「はい!」




