わたち
姫凛(僕と凛の娘)に僕の血を飲ませると彼女は少しだけ成長した。
「おとーたん」
「え?」
「おとーたん、すきー」
「え? ちょ、ちょっと待て! まだ生まれて半日くらいしか経ってないよな?」
「おとーたん、どうしたのー? どこかいたいの?」
「い、いや、ちょっとびっくりしただけだよ。えっと、お母さんにも何か言ってくれないか?」
「いいよー。おかーたん」
「な、何ですか?」
「おとーたんのことすきー?」
「え? あー、はい、好きです!」
「ふーん。でも、わたちのほうがおとーたんのことすきだよー」
「そ、そんなことありません! 私は姫凛ちゃんより旦那様のこと愛しています!」
「じゃあ、おとーたんとチューしてー」
「ふぇ!? い、今ですか?」
「うん。あれ? もしかしてできないの?」
「え、えーっと、二人きりになればできます」
「ふーん。おとーたん」
「なんだ?」
「わたちとチューしよ」
「え?」
「わたちのきもち、うけとって」
「うーん、気持ちだけ受け取っておくよ」
「おとーたん、わたちのこときらいなの?」
「いや、嫌いじゃないよ。というか、わざわざそんなことしなくても僕たちは姫凛のこと好きだぞ」
「そうなの?」
「ああ」
「はい!」
「そっか。そうなんだ。へえー。ねえ、おとーたん」
「なんだ?」
「おおきくなったらわたちとけっこんしようね」
「え? うーん、その前に誰かと結婚するかもしれないからなー。早く大きくならないといけないなー」
「そっか。なら、きょうはもうねる」
「え? あー、そうか。えっと、じゃあ、僕の部屋まで運んでやろう」
「ありがとう、おとーたん。だいすき」
「あっ! ま、また姫凛ちゃんが旦那様のほっぺにチューしました!!」
「おかーたん、いまのはおやすみのチューだよ」
「え? あー、そうなんですか。あー、良かったー」
うーん、この娘は凛みたいに危なっかしくないなー。




