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違うよ、地毛だよ

　僕を夫にすると言った黒鬼髪《くろきはつ》は僕を無理やり実家まで連れていこうとしていた。

「は、離せ！　僕はお前の夫になんかならないぞ！」

「うるさい！　お前に拒否権はない！」

「そ、そんなー！」

「さぁ、早く来い！　誰がなんと言おうと、お前は今日から私のものなのだから！！」

「ちょっと待ったー！！」

　こ、この声は！！

「なんだ？　この小娘は」

「小娘じゃない！　私はお兄ちゃんの実の妹だ！！」

「夏樹《なつき》！　どうして来たんだ！　早く逃げろ！」

「やだ！　お兄ちゃんが誰かのものになるくらいなら私がこの手でお兄ちゃんを殺すよ！！」

「なんだ？　この頭のおかしい娘は」

「いや！　お前もなかなか頭おかしいぞ！！」

「うるさい！　お前の血管をガバガバにするぞ！！」

「ええ……」

「とーにーかーくー！　今すぐお兄ちゃんを解放して！」

「嫌《いや》だと言ったら？」

「殺す！！」

「そうか。では、お前の黒髪を今すぐむしり取ってやる！」

「それはこっちのセリフだよ！！」

　ああ、ダメだ。確実に負ける……。

「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア！！」

　予想通り、黒鬼髪《くろきはつ》は一瞬で敗北した。

「な、何なんだ！　お前のその髪は！！　髪に金属を吸わせたのか！！」

「違うよ、地毛だよ」

「なん……だと……」

　あーあ、完全に心折れちゃったよ。夏樹《なつき》の髪は二口女と針女《はりおなご》の髪質のいいとこ取りしてるし霊力無効化するし長さ自分で調節できるから、もうなんでもありなんだよな……。

「お兄ちゃん、大丈夫？　まだ童貞だよね？」

「え？　あ、ああ、まあ、一応」

「そっか。じゃあ、早く帰ろう」

「ああ。でも、あいつはどうするんだ？」

「アレは童子《わらこ》ちゃんと鬼姫《きき》ちゃんが探してる白い方がなんとかしてくれるよ」

「白い方……白鬼髪《しろきはつ》のことか」

「うん、そうだよ。あれ？　カプセルン、どうしたの？　元気ないね」

「あ、あははは、油断してました」

「もうー、お兄ちゃんとデートできて嬉しい気持ちは分かるけど、油断は禁物だよー」

「はい、その通りです」

「分かればよろしい。さぁ、早く帰ろう。わたしの！　お兄ちゃん！！」

「え？　あ、ああ」