こんなの私のデータにありません
僕はカプセルン(人型モード)と共に近くの公園までやってきた。さて、これからどうしようかな。
「なあ、カプセルン」
「なあに?」
「お前、恋愛経験はあるのか?」
「……あ」
「ないんだな」
「そ、そんなことよりー、何して遊ぶー?」
「無理してキャラを作る必要ないと思うぞ」
「え?」
「デートを成功させようと情報収集していたのは知っているが、僕は男が喜びそうな女の子を演じているお前じゃなくてお前自身とデートしたいんだよ」
「わ、私自身と……ですか?」
「ああ、そうだ。ありのままのお前でいいんだよ」
「そう、ですか。では、そうします。えっと、雅人さん」
「なんだ?」
「え、えーっと、その……き、キスしてもいいですか?」
「え? キス?」
「はい。やはり実際にやってみないと分からないことがあると思うので」
「あー、なるほど。つまり知的好奇心を満たしたいんだな」
「あー、まあ、そういうことです」
嘘です! 本当は雅人さんとキスしたいだけです!
「そうか。じゃあ、ちょっとそこのベンチに座ろうか」
「は、はいっ!」
あ、あれ? 私に心臓はないはずなのにドキドキしています。どこにも異常はないはずなのにどうして?
「どうしたんだ? カプセルン。なんか顔赤いぞ」
「え!? そ、そんなことないですよ! 私はこの通り元気ですよ!」
「そうか。なら、いいんだが」
お、落ち着くのです! 私!! 毎日見ている顔じゃないですか! 今さらドキドキする必要なんてありません! 平常心! 平常心!
「ん? なんだ?」
あー! やっぱりダメですー! 雅人さんの顔を直視できません! はっ! もしやこれが噂の恋という奴なのでしょうか!
「カプセルン、少し落ち着け。頭から湯気出てるぞ」
「あー、はい! 少々お待ちください!」
あー! 恥ずかしい! どうして急にこんなことに!
「……カプセルン」
「は、はい!」
「少しハグしようか」
「え? あ、あー、はい、分かりました」
あ、あれ? どうしてでしょう。だんだん体温が下がってきました。こんなの私のデータにありません。




