今晩、お兄ちゃん食べちゃおうっと
ふぅ、やっと家に着いた。
「ただい……」
「お兄ちゃん!」
「おっとっと。夏樹、どうして泣いてるんだ? お腹空いたのか?」
「違うよ! お兄ちゃんがいつまで経っても帰ってこないからだよ!」
「あー、そういえばそうだったな。ごめんよ」
「許さない」
「え?」
「今晩、お兄ちゃん食べちゃおうっと」
「え? ちょ、夏樹」
「イチャつくならリビングとかベッドの上でしなさいよ」
「鬼姫ちゃんは黙ってて!」
「はぁ!? あたしがいなかったらこいつは今頃」
「うるさい! あっち行って!」
「この小娘! あんまり調子に乗ってるとその口引き裂くわよ!」
「すぐキレないでください」
「うるさい! あんたの首折ってやろうか!」
「首を折ったくらいでは私は死にませんよ」
「あー! もうー! 二人ともいい加減にしてよー」
童子セカンドがあたふたしている時、僕は夏樹の黒い長髪を自分の手の平に乗せていた。
「お、お兄ちゃん、どうしたの?」
「いや、殺されるならお前の髪がいいなーって思って」
「そ、そんなの嫌だよ。この髪はお兄ちゃんを守るためにあるんだから」
「そうか。でも、万が一僕が僕でなくなったらこの髪で僕を殺してくれ」
「やだ。その時は私も一緒に死ぬ」
「そうか。まあ、お前ならきっとそうするだろうな」
「まあねー」
「バカップルめ」
「バカップルですね」
「バカップルだねー」




