明日から筋トレしよう
帰宅途中に誰かに……いや、何かに襲われることはそんなにないと思うが、僕の場合日常茶飯事である。
「座敷童子! 早くこいつら拘束しなさいよ!」
「無理です! 数が多すぎてできません!」
「ちっ! 使えないわね! はぁ……仕方ない。両腕、次第高! あと、雷獣!」
「鬼姫! 妖怪の力を一度に二つ以上使うのは危険だ!」
「うるさい! お荷物は黙ってなさい!!」
「お、お荷物……」
「ま、雅人はお荷物なんかじゃないよ! え、えーっと、空気だよ!」
「空気……」
「あー! 今のはその、実は必要不可欠なものって意味で」
「お、おう……」
「あー! もうー! 私にもっと力があれば結界を維持しながら攻撃とかバフかけられるのにー!」
いや、童子セカンドの結界がなかったら今頃僕死んでるからすごく助かってるよ。
それにしてもすごい数だな。百どころじゃない青龍の突進と高速回転しながら攻撃している複数の亀の甲羅と蛇の大群となんか燃えてる鳥たちの猛攻。僕、何かしたかな?
「ねえ、雅人! 少し前に退治屋倒したわよね!」
「え? あー、あったな、そんなこと。ん? まさか、これってそいつの仲間なのか?」
「あたしが知るわけないでしょ! でも、今のあんたは普通の人間だから一撃でもくらったら即死よ! そこでおとなしくしてなさい!」
「あ、ああ、分かった」
鬼姫、かっこいいな。なんか元の体に戻ってからすっごくいいやつになったよな。
「あー! もうー! じれったい! 連続雷獣拳! 殺意剥き出し確殺バージョン……アンド! 自動ロックオン!!」
「非効率な技ですね、少し力を貸してあげます。拡散!」
妖怪の力と鬼姫の言霊の力と童子の文字の力、この三つの力があればきっとなんだってできる。そう思えるくらいすごい大技だった。
「す、すごい」
「あれ? もしかして惚れちゃった?」
「雅人さん、この鬼より私の方がお得ですよ」
「そ、そうだよ! それにお姉ちゃんと結婚したら私は雅人の義理の妹になるんだよ! 絶対お得だよ!」
「いや、なんか今はそれどころじゃないっていうか……」
「あっ、そう。なら、早く帰りましょう」
「そうですね」
「そうだねー。あっ、雅人はそこから動かなくていいよー。私が結界ごと運ぶから」
「お、おう」
な、なんか今の僕ものすごくダサいな。明日から筋トレしよう。




