日向ぼっこ
週末、僕は童子セカンドと共に草原までやってきた。ちなみに童子セカンドとは僕の中にあった鬼の力と座敷童子の童子が持つ文字の力がないと生きていけないエネルギーの塊かつ童子の妹のようなものである。
「うわー! すごーい! 緑の絨毯だー! ゴロゴロゴロゴロー!」
「あんまり転がると気持ち悪くなるぞ」
「はーい! 気をつけまーす! ゴロゴロー!」
どうやら気をつけるつもりはないみたいだな。彼女はジト目クールロリの童子(姉)とは違い、明るく素直な女の子。
童子(姉)にこの子の爪の垢を煎じて飲ませてやれば、少しは素直になるだろうか。
「雅人ー! 一緒に日向ぼっこしようよー!」
「はいはい、今行くよー」
僕が草原に身を預けると、彼女は僕がいるところまでゴロゴロ転がってきた。
「ねえ、雅人」
「なんだ?」
「もう鬼化することはないんだよね?」
「まあ、そうだなー」
「だったらさ、お姉ちゃんと付き合っちゃいなよ」
「え?」
「だって、もう普通の高校二年生なんでしょ? 仮に一線を超えちゃっても鬼の力は誰にも受け継がれないんだから思い切って付き合っちゃいなよ」
「……付き合う=一線を超えるなのか」
「え? この人と交尾したいから好きになりました! みたいなのが恋なんじゃないの?」
「うーん、まあ、たしかにそれはあるよ。生物の本能だから。でも、それだけじゃないと思うぞ」
「どういうこと?」
「子孫を残したいのなら、わざわざ子作りしなくても体外受精をすればいい。というか、子どもが欲しいのなら養子でもいいはずだ。でもまあ、金銭的余裕の有無に関わらず、人は子作りをしたがるわけだ。どうしてだと思う?」
「うーん、〇〇が気持ちいいから?」
「うん、それもあるが自分にないものを相手に埋めてほしいからそういう行為をするんだよ。例えば、温もりとか愛とかがそうだな」
「自分にはないから相手に補ってほしい。だから、合体する。なるほどねー」
「まあ、そうだな。で、恋愛はそれの前段階だからいずれどちらかが相手を襲うもしくは食べる」
「あー、うん、まあ、そうだね」
「で、僕が恋愛をしないのは僕の周りにいる女の子たちはみんな僕を食べようとしてるからだ」
「あー、なるほど。雅人はオスライオンで雅人の周りにいるのはメスライオンなんだね」
「まあ、そういうことだ。でも、僕はそこまで性欲ないから毎日誰かとやるって考えただけできついな」
「いやいや、さすがに毎日なんてことは……」
「夏樹や童子が一日一回で満足すると思うか?」
「思わない」
「だよなー」
「そう考えるとハーレム系主人公って大変なんだね。誰か一人と付き合うと刺されるかもしれないし、自分以外のヒロイン殺しちゃうかもしれない」
「妙なフラグを立てないでくれ、普通に怖いから」
「あー、ごめん。ということは、今の私たちみたいに友達というか家族みたいなノリで接していれば一番安全なんだね」
「さて、それはどうだろうな。毎日実の妹がグイグイ接近してきて困るなんてことになるかもしれないぞ」
「えっと、それってもしかして雅人の実体験?」
「ご想像にお任せするよ。よし、ちょっと昼寝するか」
「あー、うん、そうだねー。おやすみー」
雅人、私お姉ちゃんの恋を応援するって言ったけど、私も雅人の恋人候補なんだよ。私はそんなことを考えながら彼をギュッと抱きしめた。大好きだよ、雅人。




