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お兄ちゃんが帰ってきたらやっていいよ

　お兄ちゃんが死ぬ？

「ねえ、冗談だよね？」

「私が冗談でそんなことを言うと思いますか？」

「……思わない」

「そうです。私はこういう時、冗談を言わないタイプです。さて、ここで問題です。どうして私は実の妹である夏樹《なつき》さんだけにこのことを伝えたのでしょうか」

「私なら……ううん、私にしかできないことがあるからでしょ？」

「正解です。まあ、もうすでにその方法が何なのかなんとなく分かっているでしょうが」

「私の中にあるお兄ちゃんの心臓をお兄ちゃんに返せば、お兄ちゃんは死なずに済む。でも、その代わり私は死ぬ」

「はい、その通りです」

「ねえ、童子《わらこ》ちゃん。いつから私の心臓が私とお兄ちゃんの心臓でできてることに気づいてたの？　あと、こうなることも知ってたの？　ねえ、教えてよ、童子ちゃん」

「最初から全部知っていましたよ。あなたたちが生まれる前から」

「そんな前から知ってたの？」

「ええ、またあのバカ鬼が暴走した時、十王《じゅうおう》に報告するのが私の任務ですから」

「任務か……。お兄ちゃんのお嫁さんになるっていうのも任務なの？」

「いえ、それは任務ではありません。本気です」

「そっか。なら、良かった。えっと、お兄ちゃんが帰ってきたらやっていいよ。あー、あんまり痛くしないでね」

「……はい」