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しっかりやれよ、理性

 深い……。いったいどこまで沈んでいくんだろう……。

 お前はずっと沈んでろ。お前の体は俺がもらう。

 え? そ、それは困るよ。

 ほう、なら自分の名前を言ってみろ。

 僕の名前? 僕の……僕の名前、は……。

 自分の名前すら分からないやつはすっこんでろ!

 あっ! ちょ、ちょっと待て! 勝手に決めるな! おい! 待てよ! おい!!

 あぁん!? 足をつかむな! 気持ち悪い!

 お前なんかに体は渡さない! お前はいったい誰だ!

 俺はお前だよ。お前のくだらねえ理性に縛られてる本能そのものだよ!

 そうか。なら、今まで通り僕の理性に縛られてろ。そして二度と顔を見せるな。

 なら、自分の名前を言ってみろ!!

 山本やまもと 雅人まさとだ。これでいいか?

 ふんっ! なんだよ、ちゃんと言えるじゃねえか。もう自分を見失うんじゃねえぞ。

 ああ。じゃあな、本能。

 ああ。しっかりやれよ、理性。


「……ちゃん! ……にいちゃん! お兄ちゃん!!」


「……うるさいなー、そんなに叫ばなくてもちゃんと聞こえてるよ」


「よ、良かった。いつものお兄ちゃんだ。あっ、全身ボロボロにしちゃってごめんね? 痛いよね?」


「いや、ほとんど痛くないよ。むしろ気持ちいいよ」


「痩せ我慢なんかしなくていいよ。待ってて、すぐ治してあげるから。あっ、キスした方が治るの早いけど、どうする?」


「あー、じゃあ、お願いしようかな」


「うん、分かった。じゃあ、目閉じて」


「ああ」


 夏樹なつき(僕の実の妹)は正直僕より強い。だから、もう僕は……兄は必要ないと思い込んでいた。けど、それは違った。彼女には僕が必要不可欠で彼女にとっての生きる意味は僕で僕がいないと彼女は空っぽになってしまうのだ。

 普通なら成長と共に兄はいらなくなっていくはずなのだが、どうやら彼女は例外らしい。

 だって、今僕としているキスは愛している人にしかしないキスなのだから。

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