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針金より痛いんだけど!!

 私は鬼姫ききの攻撃を自分の髪で防ぎつつ、彼女を殴打おうだしていった。


「まだやるか?」


「あ、あんた、あたしが使ってるとはいえ、どうして実の兄の体をボコボコにできるの?」


「はぁ……いい? 妹っていうのはね、お兄ちゃんが死なない程度に痛めつけられるものなのよ。そんなことも知らないの?」


「何よ、それ。答えになってないわよ。というか、それほとんどの妹できないわよ」


「はぁ……これだから一人っ子は」


「な、なんですってー!!」


 私はハエより遅い彼女のパンチを手で受け流すと彼女の顔面を髪でできたこぶしで殴った。


「……っ!?」


「弱い、弱すぎる。あんた、前より弱くなってない?」


 ち、違う! 今のあたしは確実にあたしの体で戦っていた頃のあたしとほぼ同じくらいの戦闘力のはずよ! それなのにどうしてこいつはあたしより強いの!?


「なぜお前が私に勝てないか分かるか?」


「はぁ?」


「お前には愛する者がいない。だが、私には最愛の兄が目の前にいる。この意味が分かるか?」


「はぁ……つまり、あたしがこの体で戦ってる間は絶対にあんたは負けないってことでしょ?」


「ああ、その通りだ」


「まったく、あんたって本当に実の兄(こいつ)のこと好きよね」


「当たり前だ」


「じゃあ、今からこいつの心臓潰すけど、いい?」


「ダメに決まっているだろう」


「いやいや、あんたの意見なんて聞いてないから。あたしがそうするって決めた時点でそれは必ず実行されるのよ」


 あたしが借りている体の持ち主の心臓を潰すために腕を曲げようとすると、やつの髪が皮膚を貫通して体内に侵入してきた。


「な、何すんのよ! ちょ、ちょっと! あんた! こいつの神経切ろうとしてない!?」


「安心しろ、縛るだけだ。まったく、余計なことをするからこうなるんだぞ」


「ちょ、ちょっと! あんたの髪の硬度おかしくない!? 針金より痛いんだけど!!」


「当たり前だ。私の髪はこの世のあらゆる金属よりもカッチカチなのだから」


 こ、こいつ! やっぱり頭おかしい!! 油断も隙もないし頭のネジだってない! こんなのどうやって倒せばいいのよ!


「わ、分かった! 降参するから早く解放して!!」


「ダメだ。お前がお兄ちゃんの体から出ていくまで私はお前をボコボコにする」


「そんなことしたらあんたのお兄ちゃん死ぬわよ!」


「そんなことは知っている。そして、それはお前が山本家の契約を破棄すれば解決する」


「は、はぁ? あたしはあんたの家のやつに封印されて」


「封印? 山本家はお前の魂を子孫の体に宿すという契約をお前と交わしているだけでお前を封印なんてしていないぞ?」


「え? じゃあ、あたしがその契約を破棄すれば」


「ああ、お前は自力で自分の体を取り戻すことができるようになり、お兄ちゃんはお前から解放される」


「はぁ……なーんで今まで言ってくれなかったの?」


「詳細は言えない。だが、全て十王が決めたということだけは言えるな」


「え? そうなの? というか、その情報源はどこなの?」


「童子だ」


「あの座敷童子ちんちくりんかー!」


「ああ、そうだ」


「そう。で? その契約はどうやったら破棄できるの?」


「簡単だ。お前の言霊ことだまの力で『契約解除』と言えばいい」


「え? それだけ?」


「ああ、それだけだ」


「あっ、そう。じゃあ、さっそく」


「待て。その前にお兄ちゃんの安否を確認させろ」


「え? あー、いいわよ。おーい、起きなさーい。おーい」

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