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……何もしなくていいです
鬼姫が言ってた十王ってやっぱりアレだよな……。僕がそんなことを考えながら朝ごはんを食べていると座敷童子の童子が僕にこんなことを言った。
「雅人さん、昨日の夜何かあったのですか?」
「え? あー、いや、特に何も」
「嘘をつかないでください。何かあったんですね」
「あー、えーっと、うん、まあ、そうだな」
「そうですか。まあ、鬼姫絡みだということは分かりますが」
「せ、正解だ。さすがだな、童子」
「こんなの誰にでもできます。私はただ、あなたの顔に書いてあることを読んだだけなのですから。それで? あの鬼に何を言われたのですか?」
「えーっと、それは……」
「……なるほど。十王クラスの力があれば、あの鬼に対抗できるのですね。分かりました」
「え、えっと、それで僕は何をすれば」
「……何もしなくていいです」
「え?」
「あなたはいつも通り過ごしてください。それがあなたの義務であり任務であり仕事です」
「は、はぁ」
「さぁ、学生はそろそろ学校に行く時間ですよ」
「あっ、本当だ。急ごう」
あの鬼、まだ私たちに何か隠していますね。とっとと全部言ってしまえばいいのに。




