表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/1935

風呂

 え? それからどうなったのかって?

 それは……まあ、別に何も起こらなかったとしか言いようがない。

 晩ごはんを食べて、バイトに行って、それが終わったら家に帰って……あっ、そういえば、今日はみんなで。


「お兄ちゃん、お帰り」


「ん? ああ、ただいま。まだ起きてたのか?」


 妹は僕の元に歩み寄る。


「うん、起きてたよ。お風呂……一緒に入りたかったから」


「何だって? じゃあ、今日は童子わらこと一緒に入ってないのか?」


 妹はコクリとうなずく。

 玄関は真っ暗。

 妹の黒い長髪が僕の体に絡みついてくる。

 抵抗しようとは思わない。

 別に危害を加えようとしているんわけではないからだ。

 妹なりの愛情表現。

 僕はいつもそう思うことにしている。


「……えーっと、じゃあ、一緒に入ろうか」


「うん!」


 その様子を見ていた座敷童子は二人が来る前に風呂場に向かった。


「……どうして童子わらこちゃんがここにいるの? さっき入ってなかった?」


「あれはシャワーを浴びていただけです。湯船に浸かってはいません」


 なんかまたケンカが始まりそうなんだが。


「ま、まあ、いいじゃないか。たまには、みんなで入るのもいいと思うぞ?」


「……お兄ちゃんがそう言うのなら、別にいいけど」


 よ、良かった。ケンカが始まる前にどうにか対処できたぞ。


「お兄ちゃん、髪洗ってー」


「お、おう」


 僕が妹の髪を洗い始めると、座敷童子が湯船から出てきた。

 その後、彼女は僕の背中を洗い始めた。


「あのー、童子わらこさん。何をしているんですか?」


「今日は色々と迷惑をかけてしまったので、これはそのお詫びです」


 お詫び?

 別に頼んでないのだが。うーん、まあ、いいか。


「分かったよ。ただし、変なことはするなよ?」


「変なこと? それって、こういうことですか?」


 彼女は僕の耳を甘噛みした。


「……!? そ、そうだよ! そういうことだよ! 分かってるなら、やるなよ!」


「やるな? もうしないでください、お願いします! でしょう?」


 な、なんだ? なんか嫌な予感が……。


「ほら、早く言わないと、もっとすごいことしちゃいますよ?」


「わ、分かったよ、言うよ。えっと、もうしないでください、お願いします!」


 座敷童子はニヤリと笑うと、彼の頭を洗い始めた。


「いや、頭は自分で洗えるから、やらなくていいよ」


「まあまあ、そう言わずに……ね?」


 な、なんだ? さっきから妙に色っぽい声が聞こえる。


「お兄ちゃん、どうしたの? 手が止まってるよ」


「え? あー、ごめん。ちょっと考え事してた」


 妹が「へえ、そうなんだ」と言うと、座敷童子は彼の頭に洗面器に入ったお湯をかけた。


「ちょ! お湯をかけるなら、先に言えよ! びっくりするから!」


「すみません。次からは気をつけます」


 なんだ? 今度は妙に素直になったな。


「ま、まあ、分かってくれたのなら、別にいいんだけどさ」


 さてと、そろそろ夏樹なつき(妹)の髪にお湯をかけてやろうかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ