あなたの体を貸してください
文字使いたちが集まっている部屋。
「こ、これは!」
鬼姫の周囲に文字使いたちが倒れている。みんな虫の息だ。
「あら、遅かったわね。もう終わったわよ?」
「そ、そんな……」
「あとはあんただけよ。ちんちくりん」
「あなたは変わりませんね。短気で頑固で残酷でガサツです」
「あれ? もしかして褒めてるの? ありがとう」
「褒めていません。それより早く文字の力をみなさんに返してあげてください」
「嫌だと言ったら?」
「私があなたを倒します」
「あたしを倒す? 今のあんたにそれができるの?」
「できます。あなたが私の目の前にいる限り可能性はゼロではありません」
「へえ……」
座敷童子の童子(今は魂のみ)は僕がいる方に体を向けると僕の顔を見つめ始めた。
「雅人さん」
「なんだ?」
「一つ、お願いしたいことがあります」
「なんだ?」
「しばらくの間、あなたの体を貸してください」
「え?」
「お願いします。文字の力は非常に強力ですが文字数や画数が増えると霊力消費量も増えてしまうのです。なので」
「いいよ」
「え? よろしいのですか?」
「お前は負け戦をするようなやつじゃないからな。それにお前がいないとみんな悲しむ。だから、早く一緒に帰ろう」
「そうですね。では、しばらくの間、体をお借りします」
「ああ」
「では、失礼します」
「おう」
彼女は僕の腹部あたりから僕の体の中に入った。彼女は僕の意識を優しく深いところに向かわせると僕の体を使って戦闘を開始した。
「……これが雅人さんの体」
「それがどうしたー!!」
「遅い!!」
「なっ!?」
この体、すごくいいです。イメージ通りに動けますし威力もすさまじいです。これなら鬼姫に勝てます。
「顔面を一発殴れた程度で調子に乗るなよ?」
「調子になど乗っていません。さぁ、早く来なさい」
「そう。じゃあ、遠慮なく!!」
見える。彼女の動きがいつもよりはっきりと見えます。これなら……。




