忘れちゃった☆
座敷童子の童子はスウスウと寝息を立てている。僕は彼女の頬に手を添えると少しずつ彼女の唇に顔を近づけていった。
「……わーい、餃子だー」
「え?」
少し目を開けている童子は僕の左耳を口に咥えると甘噛みをした。
「あむあむあむあむ……あー、おいしい」
「ちょ! 童子! それは餃子じゃないって!」
「ねえ、お兄ちゃん。今すぐそれ殺していい? いいよね?」
「だ、ダメだ! そんなことしたらお前は!!」
「お兄ちゃんは私のなの! 誰のものにもなっちゃだめなの!」
「あー、お腹いっぱい……。おやすみー」
「な、夏樹、童子寝たぞ」
「そ、そう。ま、まあ、寝顔かわいいから許す」
良かったー、もう少しで夏樹(僕の実の妹)が犯罪者になるところだった。
「あのー、校長先生」
「ん? なあに?」
「本当は原因分かってますよね?」
「うん!」
満面の笑みを浮かべないでください。
「なら、早く元に戻してください」
「はーい! えーっと、たしか君の〇〇に私の髪の毛を数本巻き付けておいたんだよねー」
「え?」
「冗談だよ! 冗談! でも、君の体のどこかに巻きつけたのは覚えてるよ」
「そうですか。で? どこに巻きつけたんですか?」
「あー、えーっと、忘れちゃった☆」
「そうですか……。夏樹、僕の体に異物がないか調べてくれ」
「はーい!」
「あー、ちょっと待って。今、同化機能をオフにするから」
彼女は指をパチンと鳴らすと笑顔でこう言った。
「はい、これでオッケーだよー!」
「ありがとうございます。よし、じゃあ頼んだぞ、夏樹」
「うん!」
夏樹は彼女の髪の毛を五分くらいで全て発見した。
「君、すごいねー。どうして雅人くんの体の状態分かるのー?」
「え? 私はただ、お兄ちゃんの体の中にある私の髪の毛一本に耳に傾けているだけですよ?」
「うわあ、ブラコン怖いなー」
「怖くないです! 普通です!」
「そうなの? 雅人くん」
「ま、まあ、夏樹にとっての普通なので……」
「あー、うん、分かった。えっと、分かってるとは思うけど、しばらく雅人くんは異性との交流は極力避けてね。妹ちゃんは別にいいけど」
「はい、分かりました」
「よろしい。じゃあ、またねー!」
彼女はそう言うと一瞬でその場からいなくなった。早く元に戻ってほしいなー。




