腕枕
座敷童子の童子の診察は三十分くらいで終わった。
「怖いくらいどこにも異常がありませんね」
「おいおい、異常がないのはいいことじゃないのか?」
「逆に怖いんですよ。男性があの九尾の狐と一緒の部屋にいて何もされていない方が珍しいんですから」
「そうか。でも、一応異常はないんだから少しは喜んだらどうだ?」
「嫌です。嫌な予感がするので素直に喜べません」
「そっか。えっと、もう服着ていいか?」
「あー、はい、いいですよ」
「はぁ……やっと服着れるなー」
僕が服を着始めると童子が倒れた。
「おい! 童子! 大丈夫か!? おい!!」
「静かにしてください……。少し休めば元気になりますから」
「そ、そうなのか?」
「はい……少し、息苦しいだけなので」
本当にそうなのだろうか? 頬を真っ赤に染めているし息が荒い。
「童子、何か欲しいものはないか?」
「そう、ですね……。では、あなたの腕を貸してください。あー、分かっているとは思いますが、腕を引っこ抜くのではなく腕枕をしてほしいという意味ですからね?」
「え? あー、うん、もちろん分かってるよ」
ごめん、ちょっとそれやろうとした。
「そうですか。では、お願いします」
「お、おう」
彼女が僕の腕を枕にする。彼女は僕の二の腕に手を置くとスウスウと寝息を立て始めた。
「あんまり頑張りすぎるなよ」
「……はい」
彼女はそう言うとしばらく目を覚さなかった。




