その電柱
登校中……。
はぁ……朝からお兄さんに恥ずかしいところ見られちゃったなー。
「千夏さん、ちょっと止まって」
「え?」
「その電柱、灰色のペンキを頭から被って電柱のフリをしている逆柱っていう妖怪だから近づくと食べられるよ」
「ひゃあ! も、もうー! そういうことはもっと早く言ってくださいよー!」
「いや、何度も名前を呼んだんだけど全然反応しなかったから」
「あー、そうなんですか。すみません、考え事してて」
「考え事? 何か悩みがあるなら相談に乗るよ?」
「あー、いいです。別に大したことないので」
「そうか。じゃあ、気をつけていこう」
「はい」
あーあ、これ絶対変なやつだって思われてるよー。
「千夏さん」
「は、はい!」
「今日、夕方から雨が降るかもしれないよ」
「え? どうしてそんなこと分かるんですか?」
「ん? いやあ、なんか一目連がさっきから目をパチクリさせてるから、もしかしたらそういうことなのかなーと思って」
「は、はぁ」
すごいなー、妖怪の行動からそういうのを読み取れるのって。あー、いいなー。ますます好きに……って、私は別にお兄さんのことそんなに好きじゃないです! 好きじゃない、ですよね?
「千夏さん」
「は、はい」
「今日も君が生き残れるように努力するからね」
「え? あー、はい」
私、お兄さんに守られてばかりですね。情けない。何か恩返ししたいです。




