お兄さん
私がソファに座ってテレビを見ているとあの人の妹がこんなことを言いました。
「お兄ちゃん! 一緒にお風呂入ろう!」
……!?
「ああ、いいぞ」
……!?
「やったー!」
いやいや、高校生にもなって兄妹が一緒にお風呂に入るのはまずいでしょう!
で、でも、この兄妹にとっては普通のことなのでしょうね。
「お兄ちゃん、今日は〇〇も洗ってよー」
「いや、そこは自分で洗えよ」
「えー、お兄ちゃんに洗ってもらった方が絶対気持ちいいと思うんだけどなー」
こ、この妹頭おかしい! なんでそんなところ実の兄に洗わせようとするんですか! ちゃんと脳みそあるんですか!?
「いや、そこはデリケートなところだから」
「じゃあ、お兄ちゃんの〇〇洗ってあげるから私の〇〇洗ってー」
「夏樹、あんまり大声で言うな。はしたない」
「あー、そうだねー。ごめんなさーい」
「まったく、家の外で絶対そういうこと言うなよ?」
「お兄ちゃんの前でしかこんなこと言わないよ」
「そうか」
いやいや、もう少し何か言うことあるでしょう! もっと注意してくださいよ!!
「お兄ちゃん、早く行こうよー」
「はいはい。あー、そうだ。千夏さんも一緒に入る?」
「えっ! い、いえ! 私は後でいいです!」
「そうか。分かった。あー、でも多分童子と一緒に入ることになるぞ」
あの座敷童子とですか。
「あー、大丈夫です!」
この兄妹と一緒にいたら私まで頭がおかしくなりそうですから。
「そうか。じゃあ、行こうか」
「うん! あー、楽しみだなー」
あー、ダメだ。この兄妹。私の知ってる兄妹じゃない。でも兄妹ってなんかいいですね。もしこの人の妹になれたら私も彼女のようになってしまうのでしょうか。えっと、もし私があの人の妹になったとしたら呼び方は……。
「……お兄さん」
「千夏さん」
「うわあ! な、何ですか!」
「いや、ほっぺにごはん粒ついてるの気づいてないみたいだから伝えようと思って」
「え? あー、ホントですね。ありがとうございます」
「どういたしまして。あー、それと」
「はい?」
「呼び方は千夏さんの好きにしていいよ」
「え? 呼び方? あ、あー! も、もしかして聞こえてたんですか!」
「あー、うん、まあ」
「わ、忘れてください! お願いします!」
「さて、どうしようかなー」
「もうー! お兄さんの意地悪ー! あっ」
「お兄さんか。うん、悪くないな」
「あー! もうー! なんでそこですんなり受け入れるんですか! いちいちかっこよすぎなんですよー!」




