舌抜き女
放課後……。
「あっ、そうそう最近『舌抜き女』が出るらしいから気をつけろよ」
「え? し、舌抜き女?」
「ああ、名前の通り舌を抜いてしまう妖怪だ」
「こ、怖いですねー。それっていつ頃出るんですか?」
「うーん、そうだなー。たしか夕方……いや逢魔時になると出るらしいぞ。なんでも若い女の舌ばかり狙っているとか」
「な、なんで女性限定なんですか!」
「昔の人は目が悪いと目を食べれば治る……みたいなことを本気で信じてたみたいだからなー。もしかしたらそいつはまだそれを信じているのかもしれないな」
「よ、余計に怖くなりました! もう今日はダッシュで帰ります!」
「千夏さん、走ると転ぶよー」
千夏(黒髪ショートの女学生)が走り始めると路地裏から痩せ型で黒髪ロングな女性が現れた。
千夏はまだ彼女に気づいていない。しかし、やつは少しずつ千夏の元へ歩み寄っている。
僕はもしやと思い、千夏に追いつき彼女の手を握った。
「な、何ですか! 離してください!」
「ダメだ。今日はこのまま帰るぞ」
「え? ちょ、ちょっと! あんまり引っ張らないでくださいよー!」
僕は家に帰るまで振り返らなかったが、おそらくやつはずっとついてきていた。だって、家に入る直前こんな声が聞こえてきたのだから。
「……あともう少しだったのに……」




