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奇妙な点
浴槽。
「私、実の両親の顔を覚えていないんです」
「え?」
「私が生まれた後、両親は行方不明になりました。それから数日後、樹海で両親の遺体が見つかったそうです。まあ、こんなのよくある話です。でも、奇妙な点が一つありました。それは二人ともなぜか白骨化していたことです。普通、そんな短期間で白骨化するわけないのですが、二人とも骨だけになっていたそうです。なので、私は今まで誰にも『生まれてきてくれてありがとう』だなんてこと言われたことないんですよ」
「だから、僕にケチャップでそれを書くよう言ったのか」
「はい」
「なるほど。で? 君はいつ生まれたのかな?」
「えーっと、たしかちょうど梅雨が明けた頃でしたね」
「そっか。教えてくれてありがとう」
「どういたしまして」
「うーんと、もうそろそろ出ないか?」
「そうですね」
千夏(黒髪ショートの女学生)はそう言うと湯船から出た。
ちなみに夏樹(僕の実の妹)は天井からずーっと彼女を凝視していた。




