クッキー
私が帰宅すると例の座敷童子が玄関に現れました。
「で、出たー!」
「失礼ですね、私は化け物ではありませんよ?」
「で、でも妖怪なんでしょ?」
「まあ、一応」
「あー! もうー! なんでこの家には変なのしかいないんですかー!」
「少しパニックになっていますね。夏樹さんに何か言われたんですか?」
「ど、どうして分かるんですか!?」
「いや、顔に書いてあったので」
「ええ、そうですよ! あのブラコンにあの人のことが好きなのか訊かれたんですよ!」
「そうですか。で? あなたは何と答えたのですか?」
「よ、よく分からないって言ったら色々言われました」
「はぁ……一番ダメな回答ですね」
「じゃあ、なんて答えれば良かったんですか!」
「そんなの自分の気持ちを素直に伝える以外にありませんよ」
「うっ! そう言われると反論できませんね」
「まあ、とにかく早く手洗いとうがいをしてください。あとクッキーを焼いたので夏樹さんが帰ってくる前に食べてください」
「わ、分かりました!」
あの子の食欲は底なしだから急いで食べないと全部食べられちゃう!
「恋をすると女の子はきれいになるといわれていますが、彼女は今のところ特に変化はありませんね。しかし、心は少しだけ変わりつつあるようですね」




