松本 千夏
次の日。
「おーい、そろそろ起きないと遅刻するぞー」
「うーん……あと五分……。んん!? ちょ! どうしてあなたが私の部屋にいるんですか!」
「僕はただ君を起こしに来ただけだ。それより朝ごはん早く食べないと遅刻するぞ」
「え? あー、そうですね。すぐ行きます」
「ああ」
うーん、私昨日あの人にすごいことを言ったような気がする。気のせい、かな?
「おはようございまーす!」
「おはよう」
「おはよー」
「今日の朝ごはんは何ですかー?」
「それは自己紹介が終わってから教える」
「え? 自己紹介?」
「ああ、そうだ。詳細は分からないが君の両親は出張でしばらく帰ってこない。だから、君はしばらくの間この家の住人だ」
「あー、そういうことでしたか。では、自己紹介しますねー。私の名前は『松本 千夏』です! 好きな食べ物は甘いもの全般です! どうぞよろしくお願いします!!」
拍手の後、私は少しだけ不安になりました。これからこの家の人(?)たちとうまくやっていけるのかと。
「千夏か……。いい名前だな」
「あ、ありがとうございます」
「お兄ちゃん、早く朝ごはん食べないと遅刻しちゃうよー」
「まあ、待て。夏樹。千夏さん、何か質問はある?」
「え? えーっと、夏樹さんは妖怪なんですか?」
「知りたい?」
「あー! やっぱりいいです!! ごめんなさい! 忘れてください!」
「えー? いいのー? どうせすぐ分かるよー?」
「え? 分かるって何がですか?」
「まあ、それは見れば分かる。さぁ、朝ごはんを食べよう」
「わーい! いっただっきまーす!」
「ひ、ひえっ! な、なんで後頭部に口があるんですか!?」
「新入り、これだけは覚えておけ。食事の邪魔をするな。分かったか?」
「しゃ、しゃべったああああああああああああああああ!!」
「うるせえ! 早く食え!」
「は、はいー!」
あー、びっくりしたー。また幽体離脱しそうになっちゃったよー。
「先に言っておくべきだったな。夏樹は……僕の妹は二口女なんだよ」
「ふ、二口女……」
「顔についている口からはあんまり食べないんだけど、後頭部にある口からだとよく食べるんだよ。あと夏樹の髪は触手みたいなものだから触りたい時はちゃんと許可を」
「お兄ちゃん! ごはん、おかわり!」
「はいはい。あっ、そうそう。分からないことがあったら僕か座敷童子の童子に訊いてくれ」
「は、はい、分かりました」
も、もしかしてこの家にいるのって全員妖怪だったりするのかなー? そ、そんなわけないよね……。




